研究課題/領域番号 |
24618001
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
阿部 成治 福島大学, 人間発達文化学類, 特任教授 (50044566)
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キーワード | ドイツ / 人口減少 / 跡地利用 / 土地利用計画 / 住宅建設 / スクラップ不動産 |
研究概要 |
当初の計画に沿って、ルール地方6都市を対象に研究を進めている。具体的には、以下のとおりである。 ・本研究の基礎は、ルール6都市における「人口減少まちづくりに関連した新聞記事」の収集である。昨年に続き、この1年間も情報の収集作業を粛々と継続し、5千件強の新聞記事を追加収集した。収集した記事は、ダウンロードして整理した後、必要な記事を簡単かつ迅速に見出せるように、昨年までに設定した分類に応じて整理している。 ・こうして分類した新聞記事のうち、研究に重要だと思われる事項について、日本語への翻訳を進めた。まず重要だと思われる記事を訳し、それに関連したり、理解するために必要な関連記事を探して訳す、という手順で進めている。 ・以上の作業を基礎に、ポイントとなる事例を抜き出し、現地視察を2回行った。2回目の視察を行ったのは、視察を考えていた場所の全ては1回目に訪問することができなかった上、その後も視察したい場所が新たに追加されていったためである。なお、2回目の現地視察でも視察できなかった場所がいくつか残り、今後に持ち越さざるを得なかった。 ・これまでに蓄積していた情報から、「若年世代の持家化を援助する施策」の観点から重要な情報を抜き出し、分析した。さらにボーフム市については、市議会に提出された「住宅宅地構想」を入手し、訳して理解した。ミュルハイム市の百戸プログラムとボーフム市の住宅宅地構想を中心としてこれらの結果をまとめ、平成25年度日本建築学会大会学術講演会で発表した。 ・人口減少を背景に、不動産の空家や老朽化が進行し、「スクラップ不動産」として問題になっていることが明らかになったので、まとめて発表する準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
10年以上前から継続して実施している、ルール地方に関する新聞記事をダウンロードして蓄積する作業は、順調に進んでいる。従来は年間に約4千件の記事をダウンロードして整理していたが、2012年は件数が5千件を超え、2013年も同じく5千件を超える新聞記事情報を入手できた。 こうして入手した新聞記事はドイツ語で書かれているので、内容を十分理解するには記事を日本語に訳すことが望まれる。6都市を対象としているので、1都市あたり100件程度を訳したいと思っていたが、ほぼその目標に到達できた。結果的に、ダウンロードして整理した記事の1割強を翻訳したことになる。 昨年度は現地視察の時間があまりとれなかったため、今年度は現地視察に力を入れ、夏季休暇に加え、春期休暇に現地を訪問した。都市別では、これまで何回も訪問しているドルトムントよりも、他の5都市の視察に力を入れ、とくにデュイスブルク、エッセンとボーフムの3都市には時間をかけて見て回った。 本研究の核となるポイントのひとつが、若い世帯への住宅供給である。この観点から重要な動きをまとめ、平成25年度日本建築学会大会学術講演会で発表できたことは、作業がおおむね順調に進んできていることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究も、最後の年を迎える。本研究の基礎は、インターネットを利用してルール地方6都市のローカルニュースをチェックし、「人口減少時代のまちづくり」に関連があると思われる情報をダウンロードする作業であり、最終年もこの作業を粛々と継続する。ダウンロードした情報のうちで重要だと思われる情報を日本語に翻訳する作業も、従来どおり継続する。 昨年度末から、スクラップ不動産の状況と対策に焦点をあててまとめる作業を進めている。とくにこの問題が深刻なのがデュイスブルクとドルトムントであるので、2都市についてまとめ、平成26年度日本建築学会大会学術講演会で発表を行う予定である。今後は残る4都市についても検討を進め、都市の個性とその原因を明らかにする作業の一部としたい。 研究を開始する以前は、「人口フレーム」が重要なポイントとなるはずだと考えていたが、これまでに収集した資料には、この点に関する情報がほとんど見出せない。人口フレームがとくに問題となるのは、Fプラン(土地利用計画)の作成時である。この3年間に新たなFプランを策定した都市はなかったが、一部改訂は行われているので、その資料を入手し、検討してみることが必要だと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末の3月に現地視察を予定していたため、その旅費に十分な予算を残しておく必要があり、この点を優先して物品購入を控えた。また、旅費が実際にいくらになり、残額がいくら生じるのかが、旅行出発の直前まで不明のため、残額の使用について検討することができず、次年度にまわさざるを得なかった。 残額は少額であり、最終年度にまとめて消耗品購入等に使用することを予定している。
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