研究課題/領域番号 |
24618004
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
中村 仁 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (90295684)
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研究分担者 |
加藤 孝明 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (30251375)
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キーワード | 洪水マップ / 土地利用 / 空間計画 / 保険制度 / ヨーロッパ |
研究概要 |
本研究の目的は、ヨーロッパ諸国を対象に、洪水マップの策定状況と利用実態を調査し、洪水マップが各国の土地利用関連施策(土地利用計画・規制、権利補償、不動産取引におけるリスク情報開示、保険制度との連動など)にどのように反映されているかを把握して、日本における土地利用関連施策を通じた河川洪水対策のあり方を検討することである。 平成25年度は、2013年9月にイギリスのエクセターで開催された国際会議 International Conference on Flood Resilience (ICFR2013) に参加し、ゼロメートル市街地における高規格堤防を空間計画の観点から再評価する内容の研究発表を行った。また、ヨーロッパ諸国における水害リスクマネジメント、特に「洪水マップと土地利用関連施策の連携」に関する先進的な調査報告、実践事例などの情報を収集した。さらに、英仏の近年の水害被災地、水害対策の現状を視察した。 2013年10月27日~11月5日には、前年度から文献調査を先行的に進めていたオーストリアを対象に、水害リスク管理の現状、特に「洪水マップと土地利用関連施策の連携」の現状と課題を詳細に把握するため、ウィーンにおいて現地専門家へのヒアリング調査を実施した。ヒアリング先は、オーストリア連邦政府(農林・環境・水管理省)、Natural Resources and Life Sciences大学、ウィーン工科大学である。また、ドナウ川流域における近年の水害被災地や水害対策の事例を視察した。 以上の調査によって、ヨーロッパ諸国における洪水リスク管理の全般的な状況を把握するとともに、特にオーストリアにおいては、洪水マップの策定状況と利用実態、洪水マップと土地利用関連施策の連携の実態と課題について詳細に把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ヨーロッパ諸国を対象に、洪水マップの策定状況と利用実態を調査し、洪水マップが各国の土地利用関連施策にどのように反映されているかを把握して、日本における土地利用関連施策を通じた河川洪水対策のあり方を検討することである。 ヨーロッパの水害リスク管理に関する国際会議への参加、英国、フランス、オーストリア等での現地調査、オーストリアにおける専門家ヒアリング調査を実施することで、本研究の目的達成に関わる資料を多数収集することができた。特にオーストリアは、ドナウ川のような大河に加えて、急峻な山岳地帯を流れる河川が多く存在することが特徴であり、オーストリアにおける洪水マップと土地利用関連施策の連携の実態と課題を詳細に把握できたことは、今後の日本の河川洪水対策に有益な示唆を与えるものであり、大きな成果であった。 ただし、オーストリア以外の国についても調査をさらに深めていくことが課題である。 以上のことから、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の(残り1年間の研究期間における)研究の推進方策は、以下のとおりである。 1.ヨーロッパ諸国の洪水マップの策定状況と利用実態に関して、過去2年間に収集したデータの整理・分析をさらに進めるとともに、国際会議参加や文献調査による補足調査を行って、洪水マップ策定の現状と課題をまとめる。また、適宜、各国の河川流域の視察も行う。 2.ヨーロッパにおいて、特徴が異なる複数の国を選定して、洪水マップと土地利用関連施策(土地利用計画・規制、権利補償、不動産取引におけるリスク情報開示、保険制度との連動など)の連携事例を詳細に調査し、その実態と課題を明らかにする。調査対象の国はオーストリア(補足調査を実施)に加えて、英国、オランダを予定している。 3.日本における洪水マップ策定の現状と課題を文献調査で把握する。さらに、洪水マップと土地利用関連施策の連携に関して先進的な取組みをしている自治体(滋賀県を予定)を対象に現地視察とヒアリング調査を行い、その実態と課題を明らかにする。 4.以上から得られた知見をふまえ、日本における土地利用関連施策を通じた水害対策のあり方を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒアリング調査の対象を変更し、国際会議に参加して効率的に情報収集を行ったことから、当初の計画よりも執行額が若干減少し、「次年度使用額」が発生した。 次年度の研究費は、当初の計画どおり、主としてヨーロッパ諸国での現地調査費用、国内での現地調査費用に充てる計画とする。具体的には、以下の調査の旅費、会議参加費として使用する。 1)ヨーロッパ諸国の洪水リスク管理、特に洪水マップと土地利用関連施策の連携に関して、欧州で開催される関連の国際会議に参加して補足調査を行う。また、適宜、欧州諸国の河川流域の視察も行う。2)ヨーロッパにおいて、特徴が異なる複数の国を選定して、洪水マップと土地利用関連施策の連携事例を詳細に調査し、その実態と課題を明らかにする。3)日本において洪水マップと土地利用関連施策の連携に関して先進的な取組みをしている自治体(滋賀県を予定)を対象に現地視察とヒアリング調査を行い、その実態と課題を明らかにする。
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