本研究の目的は、欧州諸国を対象に、洪水マップの策定状況と利用実態を調査し、洪水マップが各国の土地利用関連施策(土地利用計画・規制、権利補償、不動産取引におけるリスク情報開示、保険制度との連動など)にどのように反映されているかを把握して、日本における土地利用関連施策を通じた河川洪水対策のあり方を検討することである。 平成26年度は、2014年9月にオランダのロッテルダムで開催された国際会議 Deltas in Times of Climate Change II に参加し、都市的土地利用と高台避難場所確保の観点から東京低地における高規格堤防の意義と課題に関する研究発表を行った。また、国際会議において洪水マップと土地利用関連施策の連携に関する先進的な調査報告、実践事例などの情報を収集した。2015年3月には、2013年の調査に引き続き、オーストリアのウィーンにおいて現地専門家へのヒアリング調査を再度実施し、洪水マップ(ハザードマップ、リスクマップ)の現状と課題、現在策定中の水害リスク管理計画の現状と課題を把握した。 以上の調査に加え、英国、オランダ、ベルギー、ドイツ、チェコ、オーストリアにおいて、水害リスクの高い諸都市を視察し、土地利用現況を把握した。また、欧州との比較の観点から、米国での国際会議、韓国での国際ワークショップに参加して情報収集を行った。さらに、日本における土地利用関連施策と連携した水害対策の先進的な取組みとして、滋賀県の流域治水の推進に関する条例に着目し、文献調査、ヒアリング調査、現地調査をもとに条例の特徴と課題を整理した。 以上の各種調査をふまえ、日本における土地利用関連施策を通じた水害リスク軽減策の展望と課題を検討した。
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