研究課題/領域番号 |
24618008
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
唐渡 広志 富山大学, 経済学部, 教授 (00345555)
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キーワード | 住宅価格指数 / ヘドニックアプローチ / 世代効果 / 年齢効果 / 一般化加法モデル |
研究概要 |
本研究の学術的な特色は,ヘドニック回帰式に「一般化加法モデル」を適用して識別問題をクリアする手法を提案している点である。特に,独創的な点は,データの問題として片付けられてしまう恐れのある,修繕やメンテナンスなどの情報不足に対して本手法が威力を発揮する所にある。 多くの場合,竣工年次を落としたモデルによって価格指数等を計測しており,もし,竣工時点が価格にもたらす影響が意味のあるものであれば,推定において除外変数バイアスをもたらす。例えば,竣工年次の古い物件の多くは,取り壊され,新築の住宅として生まれ変わる。しかし,一部の住宅は修繕やメンテナンスが十分に行われることによって,市場で取引されうる住宅として生き残っている可能性がある。つまり,データとして観察される竣工年次の古い物件ほど,他の条件が等しければ,年齢効果をコントロールしたとしても高い価格で取引されている可能性がある。これが世代効果として残る理由として考えられる。 本年度は,上記の分析内容をまとめた論文 ”Semiparametric Estimation of Time, Age and Cohort Effects in An Hedonic Model of House Prices” を執筆して,学術誌に投稿した。一般化加法モデルは変数のノンパラメトリック項を含むので高度に非線型である。住宅価格における非線型性は重要なトピックであるため,本研究でも論文 “Nonlinearity of Housing Price Structure: The Secondhand Condominium Market in the Tokyo Metropolitan Area” を発表した。また,本研究の特色をより明らかにするために,世代効果を除去できるリピートセールス法や価格指数計測の研究を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応募者は疑似パネルデータを用いた一般化加法モデルによる識別問題の解決をすでに行っている。本研究では,これをさらに発展させ,非集計のプーリングデータにおいても推定可能な計算アルゴリズムを開発した。 世代効果を明示的に導入することによって,従来の推定手法で得られる時間効果と年齢効果にバイアスが生じていることを確認した。また,三つの効果を扱う一般化加法モデルによる定式化が相対的に優れている場合があることを仮説検定により確認した。 竣工年次の古い物件ほど修繕やメンテナンスが十分に行われる可能性がある。住宅への修繕投資効果が世代効果にどの程度反映されているのかを明らかにするために,現在は分析に利用するデータベースの整備をほぼ完了した。
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今後の研究の推進方策 |
非集計データを利用して,一般化加法モデルによるその他の定式化を検討する。それぞれの推定式の入れ子関係を利用した仮説検定およびブートストラップ法を利用した検定を行い,三つの効果を扱う定式化が相対的に優れているかどうかを検証する。 「住宅購入者アンケート調査」を利用して,同データでの世代効果が,修繕やメンテナンスの影響,建築時点における住宅資本財市場の状態をどの程度拾っているのかを明らかにする。 詳細な都市計画を網羅した地理情報データを利用して周辺環境との関連を分析する。
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