本研究では,全国の郊外住宅地で取り組まれている先進的・試行的な取り組み事例を収集・分析することによりその条件とポテンシャルを明らかにすると共に,郊外のスラム化が日本に先んじて社会的テーマとなったアメリカにおける郊外住宅地再生手法の実態把握と日本への適用可能性の検討を行うことにより,日本型の郊外住宅地の「再定義」手法についてモデル提案を行うことを目的としている。 1)全国の先進的・実験的取り組みのカタログ化:近年,郊外住宅地における地域継承のための取り組みが,多様な担い手により全国各地で同時多発的に行われている。そこで,東京・大阪等の大都市の郊外,並びに,青森・大分等の地方都市の郊外を対象に,注目すべき事例の情報を集めた。さらに,そのうち特に重要な事例については,現地にて担い手へのインタビューや空間構造の把握等を行うことにより,各地の取り組みをカタログ的に理解した。 2)アメリカにおける再生手法の実態把握:アメリカにおいては,郊外住宅地の再生がいち早く大きな社会的関心となり,いくつかの再生プロジェクトが試行されている。そこで,ニューヨークの街中型再生(ジェントリフィケーション)事例,およびシアトル・ロサンジェルスにおける郊外の再生事例について,情報収集及び現地調査を行うことにより,空間の改変プロセス,および市場での位置づけの変化等を把握した。 3)日本型の郊外住宅地「再定義」手法のモデル提案:アメリカの再生手法をそのまま日本に適用することはできない。そこで,国内のポテンシャルを前提に,日本型の郊外住宅地「再定義」手法について提案をおこなった。具体的には,モデル住宅地を選定し,そこの空き家・空き地,商店等の民間空間,公園等の公共空間について,地域の居住者が主体となって再生を行うプロセスとその空間像についての提案を行い,模型等を制作してビジュアルに表現を行った。
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