研究課題/領域番号 |
24618010
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
玉川 英則 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (10171886)
|
研究分担者 |
野澤 康 工学院大学, 建築学部, 教授 (00251348)
市古 太郎 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (10318355)
河村 信治 八戸工業高等専門学校, 総合科学科, 教授 (80331958)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 東日本大震災 / 復興計画 / 岩手県野田村 / シャレットワークショップ |
研究概要 |
平成24年4月より八戸高専教員・学生メンバーを中心として、現地・岩手県野田村の最新の動向の把握に努めた。一方5月-7月にかけて、首都大学東京・工学院大学において教員とその研究室所属の大学院生により、5回の事前ワークショップ(以下WS)を開催、課題の抽出と今年度の現地シャレットワークショップ(以下CWS)に向けての目標設定を行った。現地CWSは8月18日-20日に実施、約50名の参加者を、堤防公園、モビリティ、高台住宅地、中心市街地、津波避難、なりわいの6つのグループに分け、現地調査と議論を経た上での提案を行った。成果は図を中心としたプレゼンによりまとめられているが、概要を短フレーズによって示すと以下の通りである。 堤防公園:公園予定区域をメモリアルパーク、共同農地等に区分し、機能と利用プログラムを個々にデザインする。子供が遊びたい空間を村民参加でつくる。 モビリティ:コミュニティバスと有償ボランティアバスのハイブリッドシステムとする。町民自らがモビリティ事業に参加する。 高台住宅地:アクセス部に広場と共用施設を、また、共同で利用する花壇や菜園を配置する。住宅団地入り口部に「まちの駅」を設ける。 中心市街地:地域のシンボルでもある神社の大鳥居を中心とした4つの軸線による空間構成とする。市街地内に共同作業・創作の場を確保する。 津波避難:避難の空間を日常生活の空間に埋め込んでいく。集落対抗避難場所駅伝等のイベントと避難訓練をミックスさせる。 なりわい:住農漁商が融合した新たな産直販売を起こす。村独自のライフスタイルの体験から新たななりわいにつなげる。 上記提案の報告会には、野田村村長をはじめとする現地住民も参加し、活発な議論が行われた。CWS終了後も、現地の計画に係わるコンサルタントを交えた講評会を東京で開催、さらなる課題把握から平成25年度CWSに向けての議論を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究は、ほぼ、年度当初の計画どおりに実行され、CWSの成果がまとめられている。また、研究の中間報告的な論文発表や学会発表も、後述のとおり着実に行われている。 特に、八戸高専メンバーの日常的活動や事前WSと現地CWSにより、参加者間、また参加者と地元住民の間で一定の信頼関係が醸成されてきている。一例として、上記「中心市街地」の発表会での提案に対し、地元からは、下記のような意見(村長の意見を含む)や質疑が示されている。 鳥居を中心とした4つの道、という中心部のとらえ方はなるほどと思う。/ハードだけでは活きてこない。/6mの意味は?→鳥居が見える+軸がとれる。防災面を考えると最低6mは確保したい。/本町通りにおける祝祭性とは?→祭りの場としての再生を意味。/本町通りで残したいコト、改善したいことは端的に何なのか?/自分も大変関心をもっているテーマだ。/買い物では、雑貨屋さんが少なくなっている。/のんちゃんネットを(筆者注:地元のネットワーク)使った配達サービスを検討中。/村民の中心市街地イメージとやや、ズレがあるようにも思えた。 ただし、現地計画に携わるコンサルタントを交えた講評会では、同じ提案に対し、地域のポテンシャルがそう高くない中でどれだけの「にぎわい」をつくれるのかという問題提起、地方において車社会を前提とした構想を組み入れる必要性、経済的な側面を考慮しつつ空間計画を組み立てることの重要性といった指摘がなされ、平成25年度に向けての課題も示されつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
研究2年目の平成25年度においては、24年度とほぼ同時期に再度のCWSを開催し、復興計画のさらなる精査に努めるが、現地の動向について事前の十分な情報収集・整理を行いながら進めていくことに加え、提案をより現実的で実効性のあるものとするため、以下のような手順で進める。 生業を空間計画に反映させるための現地調査(5月~7月):住まいを中心とした生活再建過程を引き続き把握しつつ、漁業、農業、観光等の「生業」をより深く理解し、それを活性化させることが重要であるという観点から、今年度は地域産業の実態についてCWS指導者が予備調査を行い、空間計画へ反映させるべき課題を抽出・整理する。 発災2 年半復興CWSの企画実施(8月中旬を予定):昨年度より長めの期間予定して行う。まず期間前半において、上記の生業の現場をCWS参加者自身が、数グループに分かれ見学・体験し、上記予備調査で把握された情報の確認と補足・修正を行う。期間後半では、その体験をもとに空間の「ビジョン」を組み立てていく。中から「空間」の計画につなげていく。その成果を昨年度と同様に発表することとするが、発表会を8月の期間中にそのまま行うか日を改めるかは、状況により調整を行う。さらに、地元からの意見をくみ入れ、さらに精査した計画案の最終発表会を年度末に行う。 また、研究期間の最終である平成26年度は、以上の成果を踏まえながら、避難行動等の実態も考慮し、発災直後から支援関係にあり平常時の交流圏でも久慈と八戸との地域連携も視野に入れた、広義のコンパクト居住というコンセプトから復興モデルの検討を進め、全体をまとめる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度においては、「物品費」に計上したパソコン購入費について、パソコン台数が計画より1台少なく済むことになり、余剰が生じた。また、謝金も予定額を下回った。一方、「旅費」と「その他」(主として、調査のためのレンタカー代やマイクロバスチャーター代)が不足したが、そこに上記余剰額の一部を振り替え、結果、100,597円の繰り越しとなった。 本研究に要する経費としては、平成25年度は主として旅費(予備調査およびCWS開催のための教員・学生旅費。全研究の約80%)となるが、これは参加人数により若干の変動が考えられるため、上記繰り越し金額は平成25年度においてその調整分として活用する。また、「その他」の項目に該当する支出は、上記のとおりレンタカー代やマイクロバスチャーター代であるが、研究費申請時においては当該項目となることを認識していなかったため、その計上が必要となり、平成25年度は繰り越し分を合わせ合理的な予算割を行っている。 さらに、情報収集や整理のための謝金、WS、CWSに必要な消耗品の代金として、全体の12%程度を計上している。
|