研究課題/領域番号 |
24618012
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
新井 信幸 東北工業大学, 工学部, 准教授 (20552409)
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研究分担者 |
米野 史健 独立行政法人建築研究所, その他部局等, その他 (60302965)
古山 周太郎 奈良県立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80530576)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 民間賃貸 / 借り上げ仮設住宅 / 居住実態 / 居住支援 / 入居プロセス |
研究概要 |
平成24年度は、前年度実施の仙台市内借上げ仮設2,581世帯及びプレハブ仮設等2,199世帯を対象にしたアンケート調査の集計分析を基に行った、①借上げ仮設における入居実態の詳細把握のためのヒアリング調査(ミクロ調査)、②岩手県内の借上げ仮設入居実態調査(マクロ調査)の集計分析を実施した。仙台市内の借上げ仮設入居実態ヒアリング調査は、アンケート調査で得られた情報を基に、世帯類型、従前居住地、入居パターンの偏りを考慮して20件を抽出し、自宅訪問による聞き取りを実施した。 ここでは現時点で作業済みの11件分の分析結果を示す。借上げ仮設への入居が4月中の世帯においては、家族の健康状態、プライバシー、ペット飼育等の問題から避難所での生活の継続が困難であること、あるいは自営業の再開のための場所の早期確保が必要性であったこと等が、早期入居の主な要因となっていることがうかがえた。また早期入居世帯は、知人や親類を頼って住まいを確保したケースがほとんどで、不動産仲介業者を頼った世帯はごくわずかだった。早期入居世帯のなかには、間取りを十分に選べる状況になかったことから、狭い住宅に大人数が暮らすケースもみられており、結果的に世帯分離したケースが複数みられている。一方、借上げ仮設入居世帯の多くは、農村漁村部等から都市部への移転となっており、居住環境の変化が大きく、その結果、ストレスや運動不足等を要因として、高齢者を中心に心身の状態が悪化するケースがみられている。 岩手県内の借上げ仮設入居実態調査では、岩手県担当部局から提供された賃貸借契約書(4015件)の集計分析から、沿岸部の大きな市では、市内で被災した比較的規模の小さな世帯により、早い段階で物件の確保が行われ、物件としては、若干古い時期に建設された小規模の賃貸重合住宅を中心に戸建の空き家なども活用する形で移転先が確保されている等の傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
借り上げ仮設住宅のマクロ調査においては、仙台市での入居者アンケート調査の集計分析、岩手県での賃貸借契約書の集計分析、行政担当部局へのヒアリングを実施し、ミクロ調査においては、仙台市での入居者ヒアリング調査を実施し、それぞれ当初計画通り進んでいる。以上の調査から、これまでの研究成果として、応急段階における借り上げ仮設住宅の物件内容、選択行動と入居過程、居住実態と課題、住宅再建に向けた取組状況等について、全体傾向と実態の詳細の把握が同時に進んでいる。具体的には岩手県においては、沿岸部内での移転は、一戸建てを中心とした築年数の古い物件が多く、内陸への移転では、単独あるいは夫婦のみでの移転が多く、比較的新しい賃貸集合住宅への入居が多いといった傾向がみられた。仙台市の調査では、早期入居世帯は知人等を頼って物件を探した結果、世帯と住宅規模等のミスマッチが生じているため、ある段階で適正な物件に転居できる仕組みが必要といえる。現段階では、借り上げ仮設住宅の制度的な課題や支援体制構築の方向性が見えてきている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、岩手県においては、これまでに把握できた移転傾向の要因を探る調査を住田町等で実施していくことを予定している。仙台市におけるミクロ調査においては、分析および考察について、さらに精査していきながら、入居パターン等の不足ケース等について追加ヒアリングを実施することを想定している。一方、当初予定通り原発事故のための移転を想定した広域避難者の入居実態等の把握のための調査および情報収集を実施していく予定である。これについては、米野が所属する建築研究所で実施する福島県内での調査を元に被験者等を探っていく。さらに、岩手・宮城・福島県内の居住支援協議会や不動産業界団体へのヒアリングを通して、借り上げ仮設住宅の制度的な課題等を多角的に捉える。以上の調査分析を精査したうえで、最終(平成26)年度には、平時の民間賃貸居住支援体制との整合等をふまえて、借り上げ仮設住宅への円滑な入居のための支援策、ミスマッチの解消策等、制度・仕組みの具体的な改善策などを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
岩手県での移転傾向の要因把握調査については、住田町でのアンケート・ヒアリング調査(約100件)で10万円、岩手県アンケート調査(約4000件)40万円の支出を予定している。仙台市における追加ヒアリング調査(約10件)に10万円、広域避難者の入居実態把握調査については80万円、各地の居住支援協議会や不動産業界団体へのヒアリング等には40万円の支出を予定している。以上の調査検討のための研究会には60万円の支出を見込んでいる。最終年度は、主に研究会実施と追加調査等で90万円を見込んでいる。
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