津波被災地域での、発災時の避難行動に関する調査、及び伝統的な集落形態の残る奄美大島での災害との居住地の歴史との関係を確かめることができ、これまでの調査で十分ではなかった奄美大島及び福島県いわき市の事例について、集落形態と信仰、そして日常生活との関係性を確かめることができた。各集落での信仰に基づく活動に用いる道や階段が、避難の際に実際に遣われた経験がある人がいることも確認された。避難場所として指定されているわけではなくとも、津波の襲来時に非難したのは子供の頃から遊んでいた場所のような日常生活上で利用をしていた公共的な空間を指摘する避難者を確認することもできた。 また、これらの調査を踏まえた住教育教材の開発を一層進めることができた。地理教育学会での発表及び交流からは、より地図を正確に確かめること、また地域の歴史的な文献との関わりについて確かめることの重要性の指摘を受けた。宗教や生活・就労を通した誰もがアクセスのできる公共性の高い場所が災害時に安全であり避難できる場所であることが確認でき、地図をじっくり読み解き、土地利用の歴史的経過を確かめることが、地理教育の中での防災教育に重要な役割を果たしうることを確認することができた。実際の中学校・高等学校等の授業を通した十分な検証を行うことができなかったのは、本研究で十分に到達できなかったポイントであるが、現場の教員からはこういった内容を取り入れたいとの意見を聞くことができた。 本研究では建築を学習する大学生の初年時教育としての教材開発にも取り組んだ。特に初年時は、建物そのものへの意識が高いものの、本教材を通して、周辺環境との関係性を防災面からも意識する専門家育成に貢献しうることも確かめられた。
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