研究課題
基盤研究(C)
ヒトES細胞からNeural Stem Sphere法で分化誘導した均質な前期神経幹細胞、後期神経幹細胞から効率よくタンパク質を抽出する方法を検討し、尿素と界面活性剤を含む緩衝液で抽出し、タンパク質の損失が多いクロロホルム-メタノールによる脱脂質処理をしないで、超遠心法によりDNAを除去後、還元アルキル化、脱塩し、緩衝液に再可溶化する方法を採用した。この際、タンパク質の分解を抑制するため、タンパク質のSDS化や電気泳動による分離を行う前に還元アルキル化することが重要であった。タンパク質濃度を決定後、分析に必要な量を一定量ずつ分取し、凍結保存した。このようにして得たタンパク質の一部をSDS化後、SDS-PAGEで分離し、それぞれ19の分画に分け、ゲル内トリプシン消化した。 次に、C18 Stage Tipsで脱脂質・脱塩する条件の最適化を行った。 Stage Tipsにペプチドを吸着させ、室温で2回洗浄後、溶出操作を2回することによりペプチドを収率よく回収することができた。回収したペプチドを、Ultimate 3000 (DIONEX,CA)及びLTQ-Orbitrap XL (Thermo Scientific, CA)を用いたLC-MS/MSにかけて分析した。その結果、ES細胞、前期神経幹細胞、後期神経幹細胞からそれぞれ1946個、1897個、2075個のタンパク質を同定し、ES細胞、前期神経幹細胞、後期神経幹細胞特異的なタンパク質としてそれぞれ307個、195個、312個を同定した。また、タンパク質の増加、減少をemPAI法を用いて調べ、ES細胞から前期神経幹細胞にかけて504個増加し1554個減少すること、前期神経幹細胞から後期神経幹細胞にかけて1812個増加し342個減少することを見出した。
3: やや遅れている
まず、用いる細胞種に適したタンパク質の効率的な抽出方法を検討した。また、LC-MS/MSにかける試料の脱脂質及び脱塩法の最適化を行った。それぞれ、現時点で最適の条件を見出すことができた。しかし、これらの検討にかなりの時間がかかったため、今後、LC-MS/MSによるタンパク質同定の再現性を調べる予定である。一方、翻訳後修飾を含むタンパク質分子全体の情報を得るため、抽出したタンパク質を一次元目が等電点電気泳動、二次元目がSDS-PAGEの二次元電気泳動で分離し、各分化の過程で発現量が増減したタンパク質を同定するのは、平成25年度に持ち越して行う予定である。これらの結果から見出された発現量変化を示すタンパク質の、mRNAレベルでの発現量変化をRT-PCRを用いて調べるのも平成25年度に行う予定である。
細胞を直接SDS化するとタンパク質の分解がかなり見られたため、尿素と界面活性剤を含む緩衝液を用いて、現時点で最適のタンパク質抽出条件を見出すことができた。しかし、この方法では内在性の膜タンパク質を十分に抽出することは困難である。膜タンパク質は、神経疾患の診断や治療のマーカー、創薬開発に寄与する可能性が高いと考えられることから、膜タンパク質の同定及び細胞分化に伴う増減も調べたい。 そこで、抽出した粗タンパク質分画を超遠心することにより沈殿として得られる、DNA・膜タンパク質分画から、Phase Transfer Surfactant法を用いて膜タンパク質由来のペプチドを抽出し、LC-MS/MSで分析する。emPAI法でタンパク質の増減の概略を評価することができるが、膜タンパク質分画由来のペプチドについては、ジメチル化標識法を用いてより定量的な評価を行う。
尿素と界面活性剤を含む緩衝液で抽出したタンパク質をSDS化後、SDS-PAGEで分離し、それぞれ19の分画に分け、ゲル内トリプシン消化する。得られたペプチドを C18 Stage Tipsで脱脂質・脱塩後、Ultimate 3000 (DIONEX,CA)及びLTQ-Orbitrap XL (Thermo Scientific, CA)を用いたLC-MS/MSにかけ、同定されるタンパク質に再現性があるかどうかを調べる。また、抽出した粗タンパク質分画を超遠心することにより沈殿として得られる、DNA・膜タンパク質分画を用いて、Phase Transfer Surfactant法により膜タンパク質由来のペプチドを抽出し、ジメチル化標識後、LC-MS/MSで分析し、定量的に評価する。翻訳後修飾を含むタンパク質分子全体の情報を得るため、尿素と界面活性剤を含む緩衝液で抽出したタンパク質を一次元目が等電点電気泳動、二次元目がSDS-PAGEの二次元電気泳動で分離し、各分化の過程で発現量が増減したタンパク質を同定する。これらの結果から見出された発現量変化を示すタンパク質の、mRNAレベルでの発現量変化をRT-PCRを用いて調べる。なお、24年度購入予定の物品と分析センターでの試料分析にかかる費用について、業者及び先方の都合で請求が次年度となるため、当該物品及び分析に支出予定だった24年度の科研費は次年度へ繰り越しする。
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Biochim. Biophys. Acta
巻: 1834 ページ: 601-610
doi.org/10.1016/j.bbapap.2012.12.002
http://pchem2.s.chiba-u.ac.jp/chem/lab/akamalab/index.html