研究課題
本年度は、fat-1マウス(fat-1+)と野生株マウス(fat-1-)について脂肪酸の含有量の異なる2種類の餌を切り替えて飼育したサンプルをオクラホマ大学松本らとの共同研究により提供して貰い、各条件下におけるマウス肝臓組織切片の脂質分子種を解析し、n-6系およびn-3系脂肪酸含有リン脂質の食餌による影響を検討した。その結果、食餌やfat-1遺伝子の導入が体内における脂質合成に大きく影響を与えることが示された。次に、脂肪酸鎖C16からC18への伸長酵素 Elovl 6の遺伝子欠損マウスについて、野生型マウスとのリン脂質分子種の比較解析を筑波大学島野らとの共同研究により行った。この実験では脳組織の局在部位の解析にLESAを用いた。LESAによる解析の結果、16:0 をsn-1に持つリン脂質分子種の割合が増えて、18:0をsn-1 に持つ分子種が減少することが判った。また、中部大学野田らとの高血圧発症モデルラットの共同研究において、食塩水の濃度の違いによる高血圧の発症時におけるリン脂質分子種の変化を観察した。この実験では高血圧の発症する12週令からその心臓のホスファチジルコリン(PC)においてリノール酸を含む分子種の減少とアラキドン酸を含む分子種の増加が観察された。LESAは、サンプル表面から直接抽出してナノESI測定を行うため、サンプルの抽出、濃縮、再溶解等の過程におけるロスが無く、組織局所のような微量サンプルにおいても十分な感度で測定が可能であった。その他、リピドミクスの活用による共同研究により、幾つかの成果を得た。
3: やや遅れている
研究室の経験のある博士研究員が退職したため、研究補助員と大学院生1名で研究を遂行しており、進行度が遅れ気味である。しかし、遺伝子欠損や病態モデル動物における研究の成果は、上記に述べたように、かなり十分な程度に出てきている。また、当初に計画した溶媒抽出表面分析による新しい測定法の有効性と応用可能性の確認はできた。
平成26年度は、これまでの研究結果の取りまとめと論文化などを中心に進める予定である。溶媒抽出表面分析法(LESA)の臓器局所における脂質代謝物解析の有効性について、これまで得られた実験結果を基に、その利用可能性などを中心に取りまとめる予定である。
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