研究課題
高度肥満に由来する糖尿病等の生活習慣病は、食事に対するし好性や選択制等が影響するため、最近、肥満の強制的な抑制法の一つとして、消化器官に対して直接外科手術を施すメタボリックサージェリーが注目され始めている。術後2‐10日という予想以上の短期間でインシュリン抵抗性の有意な改善が見られることが判ってきており、その生理的なメカニズムの解明が肥満、糖尿病などの予防、治療に有効であることが予想される。本年度の研究ではそのメタボリックサージェリーの術式により異なる効果が、どのように生ずるかを、手術経過日数ごとに臓器、血しょう中の脂質代謝物を測定することにより、その生理的メカニズムを明らかにし、肥満や糖尿病等の治療や病態マーカーとして利用可能な脂質代謝分子を発見することを目的として行われた。結果として肥満・糖尿病の発症に連動して増加する特定の高度不飽和脂肪酸分子種が肥満手術後のインスリン抵抗性の改善に連動して変化することを見出し、この分子が非常に有効なマーカーである可能性を明らかにした。昨年度までの研究成果として、食餌やfat-1遺伝子の導入が体内における脂質合成に大きく影響を与えることが示された。また、脂肪酸鎖C16からC18への伸長酵素 Elovl 6の遺伝子欠損マウスについて、LESAによる解析の結果、16:0 をsn-1に持つリン脂質分子種の割合が増えて、18:0をsn-1 に持つ分子種が減少することが判った。また、高血圧発症モデルラットの高血圧の発症する12週令からその心臓のホスファチジルコリン(PC)においてリノール酸を含む分子種の減少とアラキドン酸を含む分子種の増加が観察された。LESAは、サンプル表面から直接抽出してナノESI測定を行うため、サンプルの抽出、濃縮、再溶解等の過程におけるロスが無く、組織局所のような微量サンプルにおいても十分な感度で測定が可能であった。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件)
J Biol Chem.
巻: 290 ページ: 1005-1019
10.1074/jbc.M114.616300
Chem Phys Lipids.
巻: 187 ページ: 1-9
10.1016/j.chemphyslip.2015.01.005.
Biochim Biophys Acta.
巻: 1841 ページ: 610-619
10.1016/j.bbalip.2014.01.001.
Int J Cancer.
巻: 135 ページ: 37-47
10.1002/ijc.28652
Cell Metab.
巻: 20 ページ: 119-132
10.1016/j.cmet.2014.05.002
PLoS One.
巻: 9 ページ: e102377
10.1371/journal.pone.0102377