研究課題
本研究では非共有結合性相互作用にもとづく弱い相互作用に立脚した生体分子の集合と分子機能形態の構築の過程を詳細に検討することを課題としている。研究開始当初、生体分子への応用は、既に開発が進んでいたイオン化プローブを用いることを想定していた。しかし、実際にタンパク質にこのイオン化プローブを導入する際に問題が生じ、プローブ自体の化学構造を変換することになった。現在、新プローブを合成中である。当初計画にある超分子ジャイロスコープに関しては、担当する専門知識を持った研究分担者が他大学へ転出したため転出先で開発が進められている。そこで本研究は溶液中の自己組織性超分子として比較的大きな会合体を形成する金属錯体を通して溶液動態を解明する方向へとシフトさせた。金属と非共有電子対をもつ有機配位子との錯形成から配位化合物が得られる。一般に、錯形成はNMRによって確認されてきたが、その検出は主に化学シフト値の変化であり直接配位子と金属の数は与えない。一方、質量分析は質量数を検出することが出来るため直接配位子と金属の数を知ることができる。我々は、配位結合を壊すことなく配位化合物を検出出来るコールドスプレーイオン化質量分析 (CSI-MS;cold-spray ionization mass spectrometry) 法を開発してきた。この手法は、錯形成において溶液中に生成する繰り返し構造体の成長過程を追跡することに役立つことが示唆されている。そこで今回、金属と二種類の配位子を、配位子の割合を変化させながら混合し、得られる配位化合物を独自に開発した低温スプレーイオン化質量分析(CSI-MS)により追跡した。その結果、混合比の変化に伴って生成する錯体を捕捉でき、錯形成過程が解明された。CSI-MSは多成分系配位化合物の構築過程を追跡することができる手法である事が確認された。
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Chem. Lett.
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doi:10.1016/j.inoche.2014.03.019
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