研究課題/領域番号 |
24619009
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
山口 政俊 福岡大学, 薬学部, 教授 (50117280)
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研究分担者 |
轟木 堅一郎 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (70341451)
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キーワード | フルオラス分離技術 / 固相抽出 / アミン性代謝物 / メタボロミクス / 質量分析 |
研究概要 |
本研究では、生体内アミン性代謝物の測定にフォーカシングしたメタボロミクス解析法の開発を試みている。本目的を達成しうる分析法を開発すべく、「フルオラス分離技術」というツールを用い、アミノ酸をモデルとして検討を行った。フルオラスとは、パーフルオロアルキル基同士がもつ特異な親和性のことであり、測定対象物質にパーフルオロアルキル基を導入することで、その誘導体をパーフルオロアルキル基担持シリカカラムにより選択的に抽出することが可能となる。 昨年度までは、対象物質をアミノ酸にフォーカシングし、パーフルオロアルキルアルデヒド試薬(還元的アルキル化反応)によりフルオラス誘導体とした。得られた誘導体は、市販のパーフルオロアルキル基含有シリカゲ ル(フルオラス)固相カラムによって極めて選択的に抽出することが可能であり、その後のMS分析において十分な感度、再現性及び精度を有していることを確認した。 今年度は、その方法を実試料(ヒト血液)分析へと適用し、詳細なバリデーション試験を実施し、その有用性を証明すべく検討を行った。さらに、本法における固相抽出の操作を簡略化するとともに、その精度を向上すべく、フルオラス固定相を有するモノリス型スピンカラムを新規に作製し、その性能評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本法の実試料測定に対する有用性を確認すべく、ヒト血液(健常人)試料を用いた分析を行ったところ、回収率、再現性、精度のいずれも良好な結果を得ることができた。さらに、本法ではハイスループットに特化した分析を行うべく、固相抽出後の溶出液を直接MS装置へと導入しているが、その際も、本抽出を行うことにより、ヒト血液マトリックスの影響(マトリックス効果)を受けることなく、アミノ酸誘導体を測定可能であることを確認した。また、モノリス型フルオラススピンカラムを利用することで本法の更なるハイスループット化を目指した。これまで、フルオラス固相抽出にモノリス型スピンカラムが使用された例はなく、市販もされてはいない。今回、カラムメーカーと共同で、新たに作製したパーフルオロアルキル基修飾モノリス型スピンカラムを用い、本法における前処理として適用した。その結果、本カラムにより、アミノ酸誘導体を、十分なフルオラス性をもって選択的かつ極めて簡便・迅速に抽出可能であるということを証明した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、確立した分析法の実試料に対する有用性をさらに検証し、改善すべき点があるようであったら適宜修正する。その後、疾患モデル動物より得られた試料などを測定し、本法の臨床的応用を視野に入れた研究を行う。現在のところ、糖尿病・肥満のモデルマウス(TSOD及びTSNOマウス)由来試料、先天性アミノ酸代謝異常症(メープルシロップ尿症、フェニルケトン尿症)モデルマウス由来試料などを保有しており、それら試料中のアミノ酸を対象に本フォーカシング分析を実施する。得られた測定結果に対しては、メタボロミクス的手法(主成分分析などによる統計処理)による解析を施し、その対象疾患に特徴的な変化を観測する。さらに、入手可能なようであれば、ヒト由来の試料なども測定し、同様の手法によるフォーカシング・メタボロミクス解析を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、アミノ酸をフォーカシングすべく開発した分析方法を用いて実試料(ヒト血液)測定を行い、その有用性を確認した他、新規に作製したモノリス型フルオラス固相抽出カラムの性能評価を主に行った。しかしながら、研究費の使途は、主に標準品を含む試薬類、固相抽出用器具類に限られていた。次年度からは、当初予定のとおり、様々な実試料を用いた検討を行い、それらに対する本法の有用性をさらに詳細に評価するとともに、本法の臨床的応用のための基盤を整備する。 研究費の具体的な使途として、標準品を含む試薬類、固相抽出用器具類、分析装置(主に質量分析計)用消耗品の他、実試料用試料調製費などであり、それらに研究費の大半を使用する予定である。その他、国内及び国際学会や研究会参加のための旅費、論文投稿費などに使用する予定である。研究費の内訳に変動が生じた場合は、消耗品費で調整することとする。
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