研究課題
本研究では,パーフルオロアルキル基同士がもつ,極性に依存しない特異的な親和性(フルオラス)を利用し,生体内アミン類をターゲットとした選択的分析法を開発すべく研究を行った。とくに,生体内アミノ酸に着目した研究を行った。従来より,種々のアミノ酸分析法が開発されているが,新生児マススクリーニングにも用いられているタンデムマス法は,LCによる分離を介さないため,アミノ酸の極めて迅速な分析が可能となる。その反面,試料中夾雑成分の影響を受けやすく,必ずしも正確な測定結果が得られるとは限らないといった問題点もあった。そこで我々は,フルオラス相互作用を利用した前処理をタンデムマス法と組み合わせ,正確かつ迅速なアミノ酸分析法を開発した。本法では,アミノ酸を,perfluoroundecanaldehyde(PFUA)及び2-picoline borane(2-PB)を用いてパーフルオロアルキル化した後,新たに開発した「パーフルオロアルキル基で修飾された固定相をもつモノリス型スピンカラム(monolithic fluorous solid-phase extraction,monolithic F-SPE)」により精製・回収した。その後,精製されたアミノ酸(フルオラス誘導体)を,カラム分離を行わずタンデムマス装置にて分析した。本年度は,本法を先天性アミノ酸代謝異常症マウス血漿試料{フェニルケトン尿症(PKU)及びメープルシロップ尿症(MSUD)}に適用し,それぞれのアミノ酸濃度を定量した。その結果,本法により,疾患に関連した特定のアミノ酸が有意に上昇していることを確認することが可能であった。以上のように,本法は実試料に対して有用であるばかりか,疾患モデルより得られた試料の分析が可能であることから実用的であり,今後,アミノ酸メタボロミクスなどへの応用が可能であることを示唆するものであった。
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Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis
巻: 115 ページ: 201-207
doi:10.1016/j.jpba.2015.07.008
巻: 114 ページ: 348-354
doi:10.1016/j.jpba.2015.06.003