研究課題/領域番号 |
24619010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
山垣 亮 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所, 主席研究員 (40313209)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 質量分析 / イオン化 / イメージング / 生命動態 / 化学プローブ |
研究概要 |
本研究の目的は、マトリックス支援レーザー脱離・イオン化(MALDI)でタンパク質を飛躍的にイオン化させる化学修飾を発見することが第一段階となる。そこで「マトリックス」と呼ばれるレーザー励起により脱離・イオン化しやすい有機化合物を直接タンパク質やペプチドに化学結合で共有結合させ、従来のマトリックス(CHCA)を利用することなくフリー・マトリックスで直接サンプルをイオン化することを検討した。 ペプチドとしてSubstance-P (Sub-P; Arg-Pro-Lys-Pro-Gln-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met-NH2)を、レーザー脱離・イオン化(LDI)を促進させる有機化合物としてアントラセンカルボン酸(Ant)を用いた。アントラセンカルボン酸にはカルボン酸位置が3種異なる化合物(1-Ant、2-Ant、9-Ant)が存在し、これらのアントラセンカルボン酸のどの化合物が最もペプチドをイオン化促進として有用であるか?を検討した。通常のカップリングにより処理し生成した試料を直接MALDI-MSで観測した。マトリックスCHCAの有無によりMALDI-MS測定を行うと、Sub-P-1-Ant、Sub-P-9-Antはマトリックスを添加しても観測されなかった。それに対し、Sub-P-2-Ant, Sub-P-(2-Ant)2は観測された。さらに、Sub-P1分子に2-Antが2分子共有結合したSub-P-(2-Ant)2では、マトリックスが無い場合でもSub-Pをイオン化することに成功した。本研究より、タンパク質やペプチドにMALDIイオン化に優位な有機化合物を共有結合させることで、MALDI-MSでも感度良くイオン化させることができる。さらにマトリックスを添加させなくとも、レーザー励起により2-Antで修飾させたペプチドがその自身が直接イオン化することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のコンセプトを証明させた実験をモデルで検証することができた。 ペプチドのイオン化とは言え、MALDI-MSによるマトリックス・フリーでの直接ペプチドイオン化が可能であることを実証させたことは大きい。 さらに、3種のアントラセンカルボン酸について比較し、2位アントラセンカルボン酸が1ポット・反応により速やかに反応が進行し、マトリックス・フリーでの修飾ペプチドが簡便に得られることを明らかにしたことは実用的な観点からも大きな成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
今回ペプチドについてはアントラセンカルボン酸の修飾により直接イオン化させることができた。次はタンパク質を直接イオン化させることを検討し、モデル系において、マトリックス修飾によるイオン化効率の飛躍があるのか?を確認する。その後、さらにリガンドやアルキン部位を併せ持つ複合化学プローブの作成に着手する。 糖鎖の選択的修飾についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は得られた成果を学会発表や論文発表として公表する予定。特に2年に一度の機会である国際質量分析カンファレンスがジュネーブで開催されるのでここで成果を公表する。そのため、国際旅費を40万円を計上したい。その他の研究費は実験の消耗品費・物品費として予定している。
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