研究課題/領域番号 |
24619010
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
山垣 亮 公益財団法人サントリー生命科学財団, その他部局等, 研究員 (40313209)
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キーワード | イメージングMS / 植物花弁 / フラボノイド / 配糖化 / 糖鎖 / 化学プローブ |
研究概要 |
我々の化学プローブを糖鎖に導入する予定なので、まず生物中の糖鎖化合物をMALDI-MSにてイメージングMSをすることとした。対象は植物花弁中のフラボノイド配糖体に注目した。フラボノイド配糖体はアントシアニンと共存することで華やかな花の色、特に美しい青色を発現することが知られている。花弁上のフラボノイド配糖体をMALDI-イメージングMSにて直接観測することができ、数種類のフラボノイド配糖体のイメージ像を得ることができた。一方、植物花弁をホモジェナイズし、抽出液をLC-MSで分離・測定したところ、主要なフラボノイド配糖体は8種類検出でき、NMR構造解析とMSn解析からいずれもアグリコンのC環上の3位に糖鎖が結合していることが分かった。植物ビオラでは花弁のつぼみから開花まで花弁中に含まれるフラボノイド配糖体をLC-MSで解析すると、生活ステージが上がるに従って、ラムノシドが結合されるようになった。アントシアニンはMALDI-MSでイオン化されにくいことが分かり、そのままではMALDI-イメージングMSさせることが難しかったが、強酸を添加することで花弁上から直接イオン化させることに成功した。いずれの化合物も糖鎖が付加されており、今後化学プローブを利用できると考えられる。 ラムノシド化は花弁上で生長段階が進むにつれ進行されることがわかったので、ラムノシド化の基質であるUDP-ラムノースにアルキンを導入し化学プローブの結合部位をデザインし、導入されたUDP-ラムノースを選択的にイオン化できるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を総合的に完成させるため、生命現象の中で化学プローブの出口をまず発見しそれにたいして応用する全体的な研究を考えている。平成25年度では植物花弁に注目し、その中に含まれるフラボノイド配糖体をMALDI-MSにてイメージングすることとした。植物の花弁のイメージングMSでは、通常の動物の組織イメージングMSとは異なり、サンプリングにおいていくつかの困難な問題があった。花弁を横からスライスすることは非常に困難であり、非現実的で会ったため、両面テープを利用して直接花弁を貼り、イオン化させた。イオン化はするものの、組織の厚みが厚い問題と均一では無いという問題があり、これを克服するために花弁表面の色素細胞の部分のみを剥がしてイメージング・プレートに貼ることでイオン化を克服した。さらに花弁の厚みを相殺するためにアルミホイル等で高さを調節することでマスづれを克服した。これらの工夫により植物花弁のMALDI‐イメージングMSを行うことができた。目的のフラボノイド配糖体も検出でき、正確なイメージング像を得ることができたので、平成25年度の研究目的を達成したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
植物花弁のMALDI-イメージングMSでは、糖転移反応となる基質UDP-ラムノースをまず検出したい。フラボノイド配糖体はイオン化されているので、基質であるUDP-ラムノースを検出できれば、どの組織で配糖化が進行するのか?を明瞭にすることが可能となる。これらの糖転移反応を利用して、化学プローブを生の植物に反応させ、さらに微量のフラボノイド配糖体の検出も可能となるであろうと期待している。研究の生命現象の出口としては、花色もしくは花弁生長段階と配糖化との関係を化学プローブを利用して明らかにするのが目標である。これを実現するために研究計画に従い、化学プローブの完成を進める予定である。
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