研究課題/領域番号 |
24619011
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
本郷 やよい 独立行政法人理化学研究所, 連携支援ユニット, 専任技師 (40435681)
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キーワード | イオンモビリティー質量分析 / エレクトロスプレーイオン化 / エネルギー分解MS/MS / インドロジテルペン類 / 気相イオン衝突活性化 |
研究概要 |
平成25年度は、初年度より引き続きエネルギー分解イオンモビリティー質量分析による各種化合物(テルペン類、ペプチド類、酸性低分子化合物)のデータ獲得とイオン種によるエネルギー分解イオンモビリティー質量スペクトルの特徴付けの検討を行った。同時に、イオン化条件に依存して出現しうる化合物イオン種の変化についてデータ蓄積を進めた。その過程で、糸状菌由来天然物インドロジテルペン類の一部に正イオンモードエレクトロスプレーイオン化過程で、プロトン付加分子に対し酸素付加(+O,+2O)が起こることが分かり、そのメカニズムについて検討した研究内容を論文として報告した。その中では、酸素付加イオンの出現を支配する要因として、溶媒中に含まれる水の電気化学的な酸化反応に伴う反応活性酸素種(O3、O2ラジカル他)の生成に加え、化合物構造中の飽和5員環がC-2,3位に縮合したインドール構造に対するプロトン局在が関わることを複数のモデル化合物を用いた実験により示した。また、エレクトロスプレーイオン化で生成されるプロトン付加分子に対して、エネルギー分解イオンモビリティー質量分析を行ったところ、複数のドリフト時間を持つイオン構造の成分が存在することが分かった。つまり、イオン構造は複数存在するため、計算化学的手法による最安定化構造からのドリフト時間予測の難しさを示す結果となった。エネルギー分解イオンモビリティー質量分析では一つの化合物について60を超えるデータが得られ、複数の化合物において処理データが膨大になるが、ルーチン化したデータ解析の一部についてはパートタイマーの補助を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、イオン種識別に有用となる多くの化合物について、気相中のイオン衝突活性化とイオンモビリティーの変化を示すデータの蓄積を進めているが、現段階で得られた化合物イオンの生成とイオン構造情報のうち、興味深い現象については個別に取りまとめて論文として報告した。進歩状況としてはデータ蓄積についておおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1,2年目で蓄積されたデータとその解析結果を基に、3年目はデータ数を引き続き増やすほか、マススペクトル中、イオン種が未知のピークに対し、実際にイオン種を特定するための測定要素の抽出と実際にイオン種特定できるかどうかの検討に入る。エネルギー分解イオンモビリティー質量分析に用いる装置(SynapyG2HDMS)の実験は、研究所内でのマシンタイムを確保する必要があるが、現在のところ装置稼働状況からみて研究遂行に十分なマシンタイム確保ができると見込まれる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度使用する予定だった論文投稿料について、出版へのプロセスが年度をまたぐ形になったため一部残額が生じた。 論文投稿料および研究とりまとめにかかわる支出として使用する。学会参加発表登録料および旅費、データ処理アルバイト人件費、英文校閲などの支出を予定している。
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