研究課題
研究開始から継続して、構造既知の標準化合物を用いてエネルギー分解イオンモビリティータンデム質量分析(ER-IMS-MS(n))で得られる構造情報を評価してきた。4年目に当たる平成27年度は、本法が実サンプルの構造解析に応用可能かを検討するため、試料提供研究者との共同研究、試料分析を行った。結果の一部が学会発表等で報告された。ER-IMSでは、エレクトロスプレーイオン化で生成したオリゴペプチドのプロトン付加分子は、衝突誘起解離(MS(n))を行わずともイオンモビリティー分析において複数のドリフト時間成分が出現しやすいことが分かった。つまり、生成したイオンの構造が多岐にわたっていることが確認された。一方、同じオリゴペプチドについて、プロトンの代わりにアルカリ金属が付加したイオンでは、単一のドリフト時間成分を観測した。これらの実験ではいくつかのcyclosporin他、数種の環状モデルペプチドを使用した。分析数は限られてはいるが、ペプチドの傾向として共通してER-IMS-MS(n)にはアルカリ金属付加イオンがプロトン付加分子よりも構造情報を得やすいことを確認した。この性質を利用し、環状有機化合物の構造解析他、構造解析の一部で本法を利用した共同研究行った。うち1件では、放線菌Strestmyces.spから単離されたRK88-1355,RK85-270,Octaminomycin A,Bの構造解析において脱プロトン化分子へのER-IMS-MS(n))を行い、環状デプシペプチド中一か所のエステル結合解離による開環反応を捉えた。これは環状構造に帰属するための構造情報として利用された。
2: おおむね順調に進展している
モデル試料を使ったER-IMS-MS(n)の予備実験を概ね終了し、共同研究において実試料の構造解析に応用する段階に入ることができた。結果のいくつかが、学会等で報告された。
平成28年度は最終年度(予定)であるため、主として論文や学会等での結果取りまとめを行う。昨年度下半期より東京工業大学に異動したが、理化学研究所では引き続き客員研究員として装置利用が可能であり実験に支障はない。特に本年度は共同研究者との研究とりまとめに関わる打ち合わせを予定している。
当該年度に予定していた海外開催学会出張を取りやめ国内出張に切り替えたことによる。
主として学会出張旅費、論文投稿料として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)
PLoS One
巻: 10 ページ: e0135701
10.1371/journal.pone.0135701
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 20856
10.1038/srep20856