研究課題/領域番号 |
24619012
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
絹見 朋也 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (90293125)
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研究分担者 |
中島 芳浩 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究グループ長 (10291080)
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キーワード | 質量分析 / タンパク質 / ペプチド / 同位体希釈 |
研究概要 |
本研究は血清中の対象とするタンパク質をLC-MS/MSにより精確に測定する方法の開発を目的としている。定量の対象となるタンパク質に対して質量差を生じるアミノ酸点変異を導入した組換体タンパク質を調製、内標準として試料(血清などのタンパク質マトリックス)に添加する。定量対象タンパク質、および内標準タンパク質を精製しプロテアーゼ消化により得られたペプチドについてLC-MS/MS測定を行い、変異導入による質量差を指標として同位体希釈法と同様に定量するものである。 昨年度まで、C反応性タンパク質(CRP)について、点変異を導入した内標準タンパク質の調製にあたって、尿素で可溶化したのち段階透析法によりリフォールディングさせていたが、効率と再現性に大きな問題があった。このため希釈方法を検討し、血清や高濃度アルブミン溶液での希釈が有効で、一段階の希釈のみで固定化抗体での精製が可能であることがわかった。引き続き再現性について検討している。 本研究では、ペプチドの質量分析による定量が重要なステップとなっている。そこで、血清中C-ペプチドについて高感度かつ精確な定量法の開発を検討した。C-ペプチドは31アミノ酸からなる比較的大きなペプチドであり、血清中濃度は0.5-10 ng/mLにあり高感度分析が求められている。そこで、固定化抗体による精製、およびN末端の6-アミノキノリルN-ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AQC)による化学修飾により高感度測定を実現した。従来の固相抽出カラムによる精製法に比べ感度が約20倍上昇し、定量下限値が0.003 ngと低濃度の測定が可能となった。免疫測定法との比較では、0.19-8.49 ng/mLの濃度範囲で相関はr2 = 0.9994と極めてよく、血清中C-ペプチド測定に十分な能力を持っていることが示された。本方法はペプチドの精密な定量法としての一般性も有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度からの懸案であったCRP変異体の調製に関して収量、再現性に問題のあった点を解決した。緩衝液に対する段階希釈ではリフォールディングの効率に大きなばらつきがあったが、血清や血清濃度に近い7%アルブミン溶液に対して希釈するだけで調製が可能になった。また、段階希釈が2週間程度の期間必要であったのに対し一段階の希釈で使用でき、大幅な効率化を達成した。 一方、一般的な固相抽出カラムではなく、固定化抗体を使用することにより回収率の向上を行うことができ、さらに精製後のペプチドのN末端を化学修飾することでエレクトロスプレーイオン化の効率を高めることに成功した。これによりLC-MS/MSによる検出感度を約20倍向上させ、特に低濃度のペプチドの定量を精確に行える技術を確立した。 以上の成果が得られ、進捗はおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
血清CRP定量に関して、定量限界、直線性など定量分析法を確立に必要なデータを揃えることに注力する。特に定量可能な濃度範囲、測定ばらつき等の検討を行う。さらに標準血清などを用いた結果の検証を行える準備を整える。
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次年度の研究費の使用計画 |
クロマトグラフィーカラム類が予定より少なく済んだため、残額が生じた。また、次年度に予定している海外学会開催地隣国の研究所を訪問することになったため、海外出張費が予定より必要となり、繰り越す必要が生じた。 当初予定より増額が必要となった海外出張費に宛てる予定。
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