研究課題
本研究は、血清など生体マトリックス中のタンパク質・ペプチドの高精度、高感度測定法の開発を目的としている。このため、アミノ酸分析に同位体希釈質量分析法を利用し、液相および気相による酸加水分解条件を精査することで精度と信頼性を高め、1%程度の測定不確かさによる、高純度ペプチド・タンパク質の定量方法を確立した。このアミノ酸分析法によりC-ペプチド、C反応性タンパク質(CRP)の高精度の定量を行い標準液を調製した。さらに、血清中の低濃度C-ペプチドの測定を可能とする高感度定量法の開発を行った。すでに報告されている質量分析による血清C-ペプチドの定量法では感度に問題があり、特に1 ng/mL以下の低濃度域での測定は困難であった。そこで、血清中のC-ペプチドを固相抽出カラムに代えて抗C-ペプチド固定化抗体により回収し、さらにスクシンイミド試薬によりN末端の化学修飾を行うことで、逆相クロマトグラフィーを用いた質量分析(LC-MS/MS)での検出感度を20倍高めることに成功した。これにより、基準濃度範囲をカバーする0.19 ng/mL-8.49 ng/mLの範囲での測定が可能となった。つづいて、血清中のペプチド定量からタンパク質定量へと拡張を試みた。血清中低濃度CRPは心疾患のマーカーとして利用されているが、正確な定量法が未確立である。そこで、内標準タンパク質としてアミノ酸点変異を導入したCRPを血清試料に添加した後、固定化抗体によりCRPを回収、トリプシンにより加水分解しペプチドとした。LC-MS/MSにより天然型ペプチドと点変異導入ペプチドの比を測定し、血清中CRPの定量を行った。定量限界は血清濃度で約5ng/mL(S/N 10)と見積られ、高感度CRP測定に十分な感度が得られた。一方、繰返し測定のばらつきは3-8 %の範囲となり、測定精度の点から今後の改善が必要と考えられた。
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