研究課題/領域番号 |
24619014
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所) |
研究代表者 |
田尻 道子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, 流動研究員 (70581312)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖ペプチド / 糖タンパク質 / イオンモビリティー / 質量分析 / 衝突断面積 / 糖鎖ーペプチド間相互作用 / 免疫グロブリンG |
研究概要 |
ヒトIgGの4つのサブクラスの糖ペプチドは、296番目と300番目がPheであるかTyrであるかで異なるペプチドEEQ(Y/F)NST(Y/F)RにN型糖鎖が付加している。当該年度は、これらの糖ペプチドおよびペプチドの衝突断面積の測定をイオンモビリティー質量分析計SYNAPT G2 HDMS (Waters)および米国インディアナ大学Clemmer Groupの装置を導入して行った。また、分子力学法による分子化学計算を行い、測定によって得られた結果と比較することにより、糖ペプチドにおける糖鎖-ペプチド間相互作用について検討を行った。 IgG1(296Y/300Y)とIgG2(296F/300F)では、分子量はIgG1の方が32Da大きい。しかし、同糖鎖構造の糖ペプチドの衝突断面積はIgG2に比べてIgG1の方が小さく、コンパクトな構造であった。これらの関係はcore GlcNAcのみが付加した糖ペプチドにおいても見られた。また、IgG3(296Y/300F)とIgG4(296F/300Y)の分子量は等しいが、ペプチドおよび糖ペプチドの両方でIgG3に比べてIgG4の方が小さいという結果であった。分子化学計算によって得られた衝突断面積においても同様の関係が見られ、糖鎖-ペプチド間の相互作用については、糖鎖がペプチド骨格と水素結合を形成することにより糖ペプチドがコンパクトな構造を取ると考えられるが、どこと水素結合を形成するかはペプチドの配列に大きく依存する結果となった。 これらは気相において観察された現象であるが、生体内においてもアミノ酸配列によって糖鎖-ペプチド間の相互作用が変化することを示唆しており、さらに詳細について調べる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、ヒトIgGの糖ペプチドの糖鎖リモデリングを行い、糖ペプチドおよびペプチドについてイオンモビリティー質量分析を行った。また、より詳細について調べるためにタイプの異なるイオンモビリティー質量分析計も用いて測定を行った。糖ペプチドの構造については、CDスペクトル測定は用いず、分子力学法(MM)による分子化学計算を行うことで予測し、さらに計算によって得られた構造の衝突断面積を求めた。これらの計算結果と測定によって得られた結果とを比較することで、4つのサブクラスで糖ペプチドのコンホメーションは全て異なっており、糖鎖-ペプチド間の相互作用がペプチド配列に大きく依存することが明らかとなった。さらに詳細な構造について調べる必要があるが、当該年度の実施計画通りおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
4つのサブクラスで糖ペプチドのコンホメーションは全て異なっており、糖鎖-ペプチド間の相互作用がペプチド配列に大きく依存することが明らかとなったが、さらに他の糖タンパク質より得られた糖ペプチドについても調べ、より一般化された糖ペプチドの構造についての検討を行う。 また、イオンモビリティー質量分析で分子イオンが受けるエネルギーを知るために、サーモメータ分子を用いて測定する。この結果を用いて、実験条件をより正確に考慮した分子化学計算を行うことで、気相中の糖ペプチドイオンの立体構造を予測し、糖鎖-ペプチド間相互作用について検討する。 さらに、パパインによって限定分解を行うことで、Fcフラグメントを得る。パパインは75mM リン酸ナトリウムpH7.0(75mM NaCl および2mM EDTA 含有)にて反応させAKTAを用いて精製する。得られたFcフラグメントのイオンモビリティー質量分析およびCDスペクトル測定を行い、糖鎖-タンパク質間相互作用について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
米国インディアナ大学Clemmer Groupのイオンモビリティー質量分析計と同等の装置は国内には存在しないため、測定を行うための出張旅費として使用する。
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