研究課題/領域番号 |
24619014
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所) |
研究代表者 |
田尻 道子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, 研究員 (70581312)
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キーワード | 糖ペプチド / イオンモビリティー / 質量分析 / 衝突断面積 / 糖鎖ーペプチド間相互作用 / 免疫グロブリンG / 糖タンパク質 |
研究概要 |
ヒトIgGの4つのサブクラスの糖ペプチドは、EEQ(Y/F)NST(Y/F)RのAsnにN型糖鎖が付加している。これらの糖ペプチドおよびペプチドの衝突断面積の測定をイオンモビリティー質量分析計SYNAPT G2 HDMS (Waters)および米国インディアナ大学Clemmer Groupの装置を導入して行った。また、分子力学法(MM)を用いたコンフォメーション探索を行い、実験結果と比較することよって糖ペプチドにおける糖鎖-ペプチド間相互作用について検討した。IgG1(EEQYNSTYR)とIgG2(EEQFNSTFR)では、分子量がIgG1の方が32Da大きいにもかかわらず、同じ糖鎖構造の糖ペプチドの衝突断面積はIgG2に比べてIgG1の方が小さく、コンパクトな構造をとった。これらの関係はGlcNAc1糖のみが付加した糖ペプチドにおいても見られた。また、IgG3(EEQYNSTFR)とIgG4(EEQFNSTYR)で分子量は等しいが、ペプチドおよび糖ペプチドの両方でIgG3に比べてIgG4の方が小さかった。MMコンフォメーション探索によって得られた構造から、糖鎖がペプチド骨格と水素結合を形成することにより糖ペプチドがコンパクトな構造をとると考えられたが、どこと水素結合を形成するかはペプチド配列に大きく依存する結果であった。また、衝突断面積については実験結果と同様の関係が見られた。当該年度は、あらゆるペプチド部分を持つGlcNAc糖ペプチド試料を作り、前年度までに観察された現象がより一般化された糖ペプチドにおいても再現されるかを検証した。その結果、GlcNAc糖ペプチドは、分子量にかかわらずペプチドに比べて衝突断面積が小さく、コンパクトな構造をとる傾向があることが確認された。従って、糖鎖構造に因らず、糖が付加することが糖ペプチドのコンフォメーションに大きく影響を与えることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトIgGの4つのサブクラスのGlcNAc糖ペプチドおよびペプチドについて、二つのタイプのイオンモビリティー質量分析計による測定と分子力学法(MM)を用いたコンフォメーション探索によって構造の予測を行ってきた。実験結果と計算結果で同様の傾向が見られ、糖鎖-ペプチド間相互作用がペプチド配列に大きく依存する結果が得られた。また、ペプチドに対して糖ペプチドはコンパクトな構造をとる傾向にあるが、1糖のみが付加するGlcNAc糖ペプチドにおいてもペプチドと比べてコンパクトなコンフォメーションをとる傾向が観察された。この観察は、IgG以外のあらゆるペプチド部分を持つGlcNAc糖ペプチドにおいても確認された。従って、糖鎖構造に因らず、糖が付加することが糖ペプチドのコンフォメーションに大きく影響を与えることが明らかとなった。当該年度は、一つのまとまった成果を得ることができ、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
成果を国内・海外の質量分析学会および学術論文として発表する他、糖鎖科学のシンポジウムにおいても発表を行う。 実験結果と計算結果とで同様の関係が得られているが、MMコンフォメーション探索において、より実験結果を再現する探索条件について検討する。また、サーモメータ分子を用いて、分子イオンがイオンモビリティー内で受けるエネルギーを見積もるなど、成果をまとめるにあたって、必要な実験を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた米国インディアナ大学Clemmer Groupでの実験を実施しなかったため、旅費が想定していたよりも少なかった。また、質量分析計の備品交換が少なかったため。 米国インディアナ大学Clemmer Groupでの実験を実施し、その出張旅費として。質量分析計の備品交換のために使用することとする。
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