研究課題/領域番号 |
24620001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺西 美佳 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (10333832)
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研究分担者 |
日出間 純 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (20250855)
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キーワード | 放射線 / 植物 / DNA / 変異 / 不安定化 |
研究概要 |
放射線の種類によって、誘発されるDNA損傷に特異性は見られるのかに関して解析するため、吸水後7日目のイネ幼苗を用い、紫外線とエックス線を、時間と強度を変えて照射した。昨年度と同様の方法を用い、放射線照射により生じたDNA損傷を、DNA鎖切断、シクロブタン型ピリミジン二量体、および酸化損傷に分けて定量解析した。その結果、エックス線照射によって、一本鎖切断は二本鎖切断の5倍程度生じていた。紫外線照射によって、一本鎖切断は二本鎖切断の2倍程度生じていた。 各種放射線の照射により生じたDNA損傷には、どの修復酵素が機能しているのかに関して、野生型シロイヌナズナと、酸化損傷修復ならびにDNA鎖切断修復に関与するタンパク質の変異型シロイヌナズナを用いた解析を行った。放射線によりDNA損傷を誘発した後、通常栽培条件下に戻し、経時的にサンプルを回収し、残存する損傷数を定量した。その結果、イオンビームにより誘発された酸化損傷およびDNA鎖切断は、野生型および上記変異型シロイヌナズナのいずれにおいても、照射後数時間でほぼ残存しないことが分かった。 各種放射線照射により相同組換え頻度が上昇するかに関して、平成24年度作製したプラスミドを用い、シロイヌナズナに形質転換を行った。プラスミド上の薬剤耐性遺伝子の発現を指標とし、形質転換後代の選抜を進めた。また新たに、苔類ゼニゴケを用いた解析を行うため、放射線の照射条件の検討を行った。 各種放射線照射によりゲノムの不安定化が引き起こされるのかに関して、イネにおいて宇宙放射線照射によりDNAメチル化程度の変化が報告された論文を参考とし、放射線を照射した当代のイネを用い、参考論文と同じ領域のDNAメチル化程度の解析を行った。その結果、照射当代での変化は見られなかったため、照射後代世代のイネを用い、同様の解析を行う必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線の種類によって、誘発されるDNA損傷に特異性は見られるのかに関しては、イネを用い、紫外線とエックス線を用いた解析はほぼ完了しており、平成25年度の研究計画はおおむね達成したといえる。 各種放射線の照射により生じたDNA損傷には、どの修復酵素が機能しているのかに関して、野生型シロイヌナズナのみならず、酸化損傷修復ならびにDNA鎖切断修復に関与するタンパク質の変異型シロイヌナズナにおいても、誘発されたDNA損傷の減少が認められた。野生型シロイヌナズナと同様の速度で減少したことから、変異型シロイヌナズナでも他のタンパクが変異タンパク質の機能を相補した可能性が考えられた。そのため、本解析で用いたDNA損傷修復関連タンパク質のDNA損傷修復への寄与程度を判断することは難しいと考えられた。そのため、本課題に関しては、達成度は低いと考えられる。 各種放射線照射により相同組換え頻度が上昇するかに関して、形質転換後代の選抜を進め、ホモ系統と考えられる植物体が得られたことから、平成25年度の研究計画はおおむね達成したといえる。 各種放射線照射によりゲノムの不安定化が引き起こされるのかに関して、文献に基づいた情報より、遺伝子領域を絞った詳細な解析を行った。照射当代においては明確な変化は見られなかったが、照射後代世代において今後同様の解析を進めることができると考えられ、当初の計画の6割は達成したと考えられる。 また当初の計画に加え、基部陸上植物である苔類ゼニゴケを用いた解析を新たに計画し、実施した。ゼニゴケは、イネやシロイヌナズナよりも紫外線に耐性を示す可能性も見出しており、放射線耐性と相同組換え頻度に関して解析するのに適した材料であると期待される。この点も含めて、計画全般としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
放射線の種類によって、誘発されるDNA損傷に特異性は見られるのかに関しては、植物の組織間で誘発されるDNA損傷に差が見られるのかを明らかにするため、イネの地上部と地下部に分けた解析を検討している、また生体への放射線の影響を正しく理解するため、生体に対して放射線が照射された面から生体内部に向けて、組織を深度ごとに分けて解析する方法を検討している。各種放射線の照射により生じたDNA損傷には、どの修復酵素が機能しているのかに関して、新たな変異体の解析が必要であると考えられ、候補遺伝子の選択を行っている。各種放射線照射により相同組換え頻度が上昇するかに関して、ゼニゴケにおける相同組換え頻度も含めて検出する。各種放射線照射によりゲノムの不安定化が引き起こされるのかに関して、照射後代世代を用いた解析を進めると共に、クロマチン構造の変化をヒストン修飾に対する特異的抗体を用いて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究において重要なDNA損傷を種類ごとに分けて定量する方法に関して、平成24年度の検討結果、安定した方法を見出せたため、本年度での条件検討項目が当初予定よりも減少したため、消耗品の支出額が低かった。また、海外での学会発表を計画していたが、適する学会での発表の調整がつかなかったため、取りやめた。また、論文発表に関しては、当初計画よりも若干の遅れが生じており、英文校閲料、ならびに投稿料が生じなかった。 本研究をより進めるために、新たに計画したゼニゴケを用いた解析を遂行するために使用する。また海外での学会発表の機会を探るとともに、論文の投稿を行う。
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