研究課題/領域番号 |
24620002
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤井 伸治 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (70272002)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 植物 / 重力感受 / シロイヌナズナ / アミロプラスト / オーキシン排出キャリア |
研究概要 |
植物は、細胞内小器官のプラスチドの一種であるアミロプラストの沈降を感受することにより、重力の向きを感受する仕組みを適応・進化させた。この重力を感受する仕組みは動物などの他の生物種には見られない特殊な仕組みであり、植物の重力感受機構を明らかにすることにより、生物の重力感受機構の基本原理と植物の重力感受機構の特殊性を理解することが可能となる。しかしながら、植物の重力シグナル変換分子は同定されていない。シロイヌナズナの根の重力感受経路はアミロプラストの沈降を介する経路 (PGM経路) とARG1を介する経路の2つの独立した経路からなると考えられている。シロイヌナズナのarg1 pgm二重突然変異体は、1g条件下では重力屈性がほとんど発現しないが、低速遠心機を用いて25×g条件下で実験を行うと、重力屈性による屈曲が部分的に回復する。したがって、arg1 pgm二重突然変異体でも、重力シグナル変換分子が機能していると考えられる。そこで、この重力シグナル変換分子の機能が突然変異によって欠損した突然変異体を単離するため、arg1 pgm二重突然変異体にEMSを処理して突然変異を誘発し、得られたM2世代の芽生えをスクリーニングし、低速遠心機を用いて25×g条件下で重力屈性を示さないM2個体を選抜した。その結果、arg1 pgm二重突然変異体で残存している重力屈性能に異常を示す16系統の突然変異体 (enhancer of arg1 pgm突然変異体) の候補を選抜した。 重力感受細胞からの重力シグナルの伝達に機能するAtPIN3以外の分子の探索・同定するため、pin3突然変異体にEMSを処理して突然変異を誘発し、pin3突然変異体に突然変異体に比べて、更に根の重力屈性が低下しているM2個体を選抜した3系統の突然変異体の遺伝解析の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
arg1 pgm二重突然変異体で残存している重力屈性能に異常を示す突然変異体 (enhancer of arg1 pgm突然変異体) の候補のM2個体から16系統からしか、M3種子が採種できなかった。20個体のM1植物から採種できたM2種子をプールして保存しているので、今後、再度、M2個体をスクリーニングし、採種できなかったM2個体から後代を得て、本研究で取り扱える突然変異体の候補の数を増加する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、得られている突然変異体の候補については、重力屈性の異常が遺伝する系統を選抜し、突然変異体を得る。arg1-3 pgm-1二重突然変異体の遺伝背景は Colなので、enhancer of arg1 pgm突然変異体については、Lerのそれぞれのアリル突然変異体であるrhg (root hypocotyl gravitropism) 突然変異体とstf1 (starch free1) 突然変異体の交配後代から選抜した二重突然変異体と、得られた突然変異体とを交配させ、得られたF2集団を用いてマピングを行い、突然変異遺伝子の座上染色体を特定する。enhancer of pin3突然変異体についても、pin3-3の遺伝背景はColなので、LerのAtPIN3へのトランスポゾン挿入系統 (CS26707) と得られた突然変異体とを交配し、得られたF2集団を用いてラフマッッピングを行い、座上染色体を特定する。いずれの場合も、近傍に既知の重力屈性が異常な突然変異体の突然変異原因遺伝子があれば、その遺伝子の塩基配列を決定し、得られた突然変異体が新規の突然変異体であるかを検討する。新規の突然変異体については、ファインマッピングにより突然変異原因遺伝子の候補遺伝子を同定し、塩基配列の置換を見出す。 また、どちらの突然変異体についても、更にスクリーニングするM2個体を増やし、突然変異体の候補を増やす。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進度がやや遅れてしまったため、予算を十分に執行できなかった。今年度に繰り越した予算を使って、実験補助を雇用し、研究を進度の遅れを取り戻す。
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