研究課題/領域番号 |
24620003
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
唐原 一郎 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (60283058)
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キーワード | 微小重力 / 過重力 / 宇宙環境 / 成長 / 植物 |
研究概要 |
本年度は,まず地上実験として過重力がシロイヌナズナ花芽の遺伝子発現に与える影響の解析を行った.その結果,ペクチン修飾に関わると推測されるべータ1,3グルカナーゼ遺伝子の発現上昇およびべータガラクトシダーゼやアミノ酸輸送に関わる遺伝子の発現低下が見られ,花粉の発芽・伸長に影響を及ぼす可能性が示唆された一方で,アスパラギン酸アミノ基転移酵素の発現上昇および細胞壁インベルターゼやショ糖トランスポーター遺伝子の発現低下が見られ,プロテインボディの発達やデンプン蓄積にも影響を及ぼす可能性も示唆された. 次に継続中であるSpace Seed宇宙実験の解析として,宇宙および微小重力環境が花茎の成長方向に与える影響を調べた.花茎の成長方向に関しては栽培容器の底面に垂直な線となす角(傾き)を測定し成長角度として,その分布のばらつき(分散)の違いを調べた.その結果,全ての実験区において概ね植物栽培容器の天井側に向かって成長していた.花茎の成長方向を決める要因としては1 G 区においては,花茎が重力と反対方向に成長する重力屈性反応と光源であるLEDランプが天井に設置されているために起こる光屈性が考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は2020年までの国際宇宙ステーションISS「きぼう」利用シナリオに沿った大型装置プロジェクトに関わっており,その推進母体である宇宙環境利用科学委員会リサーチティームにおいて,大型の植物栽培装置の計画が具体化している.この装置計画の推進に呼応し,宇宙実験を念頭においた準備を進めるとともに,微小重力環境の影響解析であるSpace Seed宇宙実験の解析を優先的に行っている.現時点では概要に述べた結果を得られており,概ね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析により,果実および種子に関する解析の結果,宇宙実験においては地上1 G区と比較して,長角果の長さは短く,1つの長角果内の種子数は少なくなる傾向が見られる一方で,宇宙実験区の中で比較すると,微小重力区で生育された種子の重量は宇宙1 G区と比較して大きい傾向が見られている.これらの原因を探るためには,まず果実や種子の解剖学的解析が必要である.そのためには,人工産物を伴うことなく化学固定・包埋をすることが困難な種子に適用でき,かつ宇宙で得られた貴重な試料を非侵襲で内部観察を行うことができるX線マイクロCTが大変有効であり,本年度は予備的にその解析に着手した. 次年度はSPring-8のビームラインBL20XUに共同研究者と共に採択されたので,引き続きこれを用いた種子の解剖学的解析を進める.また引き続き宇宙実験を念頭においた準備として,また宇宙大型植物栽培装置計画の基礎研究として,植物の物質生産の視点からの研究を行う.これおいては,これまでまったくわかっていなかった重力環境が根系に与える影響も含めて過重力環境が植物の生活環に与える影響を含めて解析する.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度はデータ収集のためのSPring-8申請が採択されなかったが,次年度には,予測より多く採択され,旅費がかさむことと,成果発表のため国際学会参加が2件予定されるため. SPring-8(兵庫県佐用町)でのデータ収集は,前期で3回は確定しており,後期にももし採択されればさらに3回の旅費が必要となること.および,以下の2件の国際学会参加に参加することが予定からの変更である. 40th COSPAR Scientific Assembly, Moscow, Russia 2014 10th Asian Microgravity Symposium 2014, Seoul, South Korea
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