細菌の進化や環境適応には、外来遺伝子の取り組みが大きく寄与している。宇宙環境において、細菌間の遺伝子伝播の頻度が上昇する場合、病原遺伝子た抗生物質耐性遺伝子が予測を超えて伝播する可能性が生じ、バイオハザードの要因となる。今研究では、微小重量シミュレーション装置を用いて、微小重力下における細菌の遺伝子伝播頻度や伝播の範囲、伝播に及ぼす因子について、微生物生態学的手法を用いて考究する。 平成26年度までに実施した大腸菌を受容菌とした形質転換実験により微小重力の影響は見られなかったものの、自然形質転換能をもつ細菌を受容菌とした検討が重要であることを見出した。そこで最終年度は、新たに広宿主域プラスミドpBBR122-gfpuvを作成したうえで、受容菌には自然形質転換能をもつPseudomonas stuzteri、ならびに自然環境分離株を使用し検討を行った。昨年度までに構築した実験系を用いて、微小重力の形質転換に与える影響を抗生物質耐性遺伝子をマーカーとした選択培地により評価したところ、微小重力下、通常重力下の形質転換頻度に大きな差は見られなかった。 以上の結果より、微小重力は形質転換には大きな影響を与えない可能性が示唆された。
|