研究課題/領域番号 |
24620007
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
森田 隆 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70150349)
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研究分担者 |
吉田 佳世 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30311921)
木津 あかね 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30623201)
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キーワード | 宇宙放射線 / DNA20差鎖切断 / ヒストンH2AX / 遺伝子発現誘導 / Tet-0n |
研究概要 |
我々は、DNA修復遺伝子の活性化により、哺乳動物細胞の放射線耐性が増強するという仮説をたてた。大腸菌などの原核生物や、真核生物であるが単細胞生物である酵母は、放射線照射により種々のDNA修復遺伝子の合成を誘導させて、放射線によるDNA切断に対応する機能をもっている。哺乳動物であるマウスやヒトには、このような誘導機能は備わっていない。そこで、宇宙放射線などに対してDNA修復遺伝子の発現レベルを誘導的に上げることにより、放射線に対する耐性を獲得できるのではないかと考えた。特に、ヒストンH2AX遺伝子は、その発現量により、DNA修復能、染色体異常の発生、細胞への発癌誘発性などが依存することが知られているので、その遺伝子発現を誘導することを目的に実験を行った。 具体的には、Tet-On誘導によるヒストンH2AX遺伝子高発現系ES細胞の作製を行った。 マウスヒストンH2AX遺伝子の開始コドンにテトラサイクリン(類似物であるドキシサイクリン)で発現を誘導するTet-Onシステムの転写活性化遺伝子rtTA2を挿入する。その下流には、遺伝子改変のためのマーカーであるネオマイシン耐性遺伝子を挿入する。さらに下流には、テトラサイクリンによる転写活性化に必要なオペレータ―TRE2遺伝子を挿入し、その下流にヒストンH2AX遺伝子を連結する。このような構造をもつターゲティングベクターをES細胞に導入し、ヒストンH2AX遺伝子をTet-On誘導できるようにしたマウスES細胞を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) Tet-On誘導によるヒストンH2AX遺伝子高発現系ES細胞の作製 マウスヒストンH2AX遺伝子の開始コドンにテトラサイクリン(類似物であるドキシサイクリン)で発現を誘導するTet-Onシステムの転写活性化遺伝子rtTA2を挿入した。その下流には、遺伝子改変のためのマーカーであるネオマイシン耐性遺伝子を挿入する。さらに下流には、テトラサイクリンによる転写活性化に必要なオペレータ―TRE2遺伝子を挿入し、その下流にヒストンH2AX遺伝子を連結した。このような構造をもつターゲティングベクターをES細胞に導入し、ヒストンH2AX遺伝子をTet-On誘導できるようにしたマウスES細胞を作製でき、これまでの目的は概ね順調に達せられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Tet-On誘導によるヒストンH2AX遺伝子の高発現の確認を行う。 Tet-On誘導によるヒストンH2AX遺伝子高発現ベクターを導入したES細胞について、ヒストンH2AX遺伝子の発現がテトラサイクリンの添加により誘導されるかどうか、ノーザンブロット、RT-PCR、ウエスタンブロットなどの方法により、定量的に解析する。 さらに、ヒストンH2AX遺伝子の発現がテトラサイクリンにより高く発現することが明らかになれば、その細胞について、鉄イオン線、炭素イオン線のような宇宙放射線に含まれる放射線を地上で照射し、感受性を比較する。実際には、細胞の生存率、染色体異常などを解析し、放射線に対する耐性を獲得しているか検討する。さらに、ヒストンH2AX遺伝子産物の発現と耐性の関係について定量的に解析する。
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