研究課題
平成24年度に引き続き、H25年度も疑似微小重力環境作成装置である3次元クリノスタットや過重力作成装置を用いて、植物の成長・発達における様々な過程対する重力刺激の影響を、植物分子生理学的側面および植物ホルモン動態の側面からの解析を行った。今年度の主な研究成果は、以下の通りである。①疑似微小重力刺激は、植物の葉の老化を促進する。オートムギ第一葉切片を用い、細胞壁構成成分の観点から葉の老化と細胞壁多糖類代謝との関係を調べ、老化とセルロース量との間に密接な関係があることを明らかにし、論文の形で発表した。②エンドウ芽生えを対象に、過重力環境刺激のオーキシン極性移動に対する影響を調べ、過重力環境(100G)では、茎の成長が阻害されるとともに、オーキシン極性移動が阻害されていることを明らかにした。現在、組織張力および分子生理学的観点から解析を継続中である。③宇宙微小重力環境下では、フック形成が阻害される。エンドウ芽生えを対象にフック形成に対する重力の影響を詳細に解析し、フック形成の初期には重力は影響しないものの、その後のフックの開く過程において影響を及ぼしていることを明らかにした。現在、オーキシン極性移動の観点から解析を継続中。④ 疑似微小重力で量的変動を示す植物成長制御物質の探索の結果、重力刺激に応答して変動する成長抑制物質を見出し、その構造解析を行っている(継続中)。また、重力はオーキシン極性移動システム構築に影響を及ぼす。そこで、オーキシン極性移動を制御する天然生理活性物質を探索し、dehydrocostus lactone 並びに4-hydroxy-Beta-thujoneを単離・同定した。
2: おおむね順調に進展している
研究成果を第34回国際重力生理学会国際学会(34th Annual Meeting International Gravitational Physiology)を含む複数の学会で発表を行っており、さらには、その一部を複数の論文としてまとめることができている。研究組織もそれぞれの役割を果たし、有機的なつながりをももって研究が進展できていると判断される。
H25年度の研究をさらに発展させ、植物の成長・発達制御に関わるオーキシン極性移動と重力のかかわりを分子生理学的、植物ホルモン学的側面から明らかにしていきたいと考えている。
・電子ジャーナルへの論文掲載にかかる費用を次年度に変更したため。・国際会議等での成果発表を計画しており、消耗品等の支出を抑えたため。・電子ジャーナルへの論文掲載にかなりの費用が掛かることから、その分の支出を予定。現在登校中の論文が受理された場合、その掲載費として約1000ユーロ必要であることから、約15万円が必要となる。・実験装置の更新等を計画している。・国際会議等を含む学会での成果発表を予定。
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