宇宙における光合成活性の測定に関しては、インド回収衛星SRE2の利用による、日本ーインド共同宇宙実験「微小重力下におけるシアノバクテリアの増殖に関する研究」の地上実験としてほぼ完了した。実験材料としては、食用にもなるスピルリナ(Arthrospira platensisNIES-39)を選定し、宇宙での培養用に開発した装置内で6日間培養し、菌濃度、クロロフィル量、タンパク質量等について、その増加量を測定した。その結果、スピルリナは本実験条件下で十分に増殖することが確認された。光合成活性の測定に関しては、酸素発生量の直接定量と酸素や炭素の同位体を用いての質量分析による活性の測定を行い、宇宙実験と類似した地上実験条件下で活性を測定することに成功した。これらの研究成果は、微生物関連の国際会議およびJAXA宇宙科学研究所でのシンポジウムにおいて発表した。 本研究のもう一つの課題であるナノバブルの宇宙利用に関しては、まず簡便なナノバブル作成法の開発に取り組んだ。最終的に、市販のハンドミキサーで1%エタノールを高速撹拌することにより、100nm以下の微細気泡を持つナノバブル水を作成することに成功した。また、ナノバブルのゼータ電位は-30mV~-40mVであり、ナノバブル水に食塩を添加することにより、ゼータ電位は0mVに近ずくと同時に気泡径が大きくなることを明らかにした。またナノバブルは1カ月以上安定して存在することが確認された。ナノバブルのシアノバクテリアの増殖におよぼす効果に関しては、0.3%エタノールを用いて作成したナノバブル培地で培養したアナべナは、対照のアナべナより速く増殖し、70mMの食塩による増殖の阻害に対しても強い耐性を示した。カイワレダイコン種子の発芽、伸長におよぼすナノバブル水の効果を検討した結果、ナノバブル水は根や茎の伸長を促す可能性があることが示された。
|