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2013 年度 実施状況報告書

神経回路形成と機能発達に対する宇宙放射線リスクと低減に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24620012
研究機関独立行政法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

坂下 哲哉  独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (30311377)

研究分担者 鈴木 芳代  独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センター, 研究員 (10507437)
簗瀬 澄乃  大東文化大学, スポーツ・健康科学部, 准教授 (90249061)
キーワード宇宙放射線生物学
研究概要

本研究は、神経回路の形成と機能の発達に対する宇宙放射線の影響を、モデル生物線虫を用いて明らかにすることを目的とした研究である。特に、神経系への影響を調べるために、原爆小頭症に関係する最新知見に基づき、酸化ストレスに着目して、分子マーカーを用いた酸化ストレス部位と神経回路の形成異常の同時観察を行い、細胞・組織特異的な影響メカニズムの解明を目指す。加えて、抗酸化物質による機能発達障害の低減の可能性を探る。本研究の成果は、将来、火星等への長期宇宙飛行や原子炉事故時の放射線被ばくリスクの低減に貢献できる可能性がある。
平成25年度は、1. 広範な活性酸素種のマーカーとして知られる2’,7’-ジクロロフルオレセイン(DCF)試薬を用いた線虫の酸化ストレス部位の観察を開始した。放射線暴露時に生じることで知られる過酸化水素を線虫に暴露した際に、食道近辺の細胞に広く酸化ストレスが生じることが分かった。また、2. 線虫の酸化ストレスの応答経路として知られるインシュリン経路に関わる遺伝子daf-2及び高塩濃度ストレスに応答する経路に関わる遺伝子gpc-1の機能欠損変異体を用いて、線虫の化学走性学習への放射線影響を評価できた。前者の変異体では、線虫の体全体及び頭部・腸部・尾部の各部位に放射線が照射された時、いずれも学習効果に影響があるのに対して、後者は、体の一部のみ放射線が照射された時のみ放射線の効果が認められた。加えて、3. 構築したシミューレーション解析環境を用いて化学走性学習に関わる神経構造の解析を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本課題で実施する研究内容は、1. 化学走性学習を指標とした放射線照射後の機能発達への影響解析、2. 分子マーカーを用いた神経回路の形成異常と酸化ストレス状態の解析、3. ニューラルネットワーク解析を用いた機能発達異常の原因推定、4. 抗酸化物
質による機能発達障害の低減の検討である。
平成24年度中に、1. の実験ベースの確立と3. のニューラルネットワーク解析環境を構築した。平成25年度には、2. の分子マーカーである2’,7’-ジクロロフルオレセイン(DCF)試薬を用いた酸化ストレスの解析を開始し、過酸化水素暴露時の線虫の体の中の酸化ストレス部位の観察に成功した。さらに、平成25年度には、宇宙空間で重要な放射線(重粒子線)である高エネルギー炭素線のマイクロビームを用いて、線虫の体の局部に酸化ストレスを付与する実験を実施し、部位ごとの影響が、変異体の種類によって異なることを明らかにできた。この重イオンマイクロビーム照射実験は、当初の計画を超えた成果である。
以上の状況を鑑み、本研究課題は、おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

平成26年度は、重イオンマイクロビームを用いた線虫の特定部位に酸化ストレスを付加する方法と、酸化ストレスの分子マーカーである2’,7’-ジクロロフルオレセイン(DCF)試薬を用いた、線虫の特定部位の酸化ストレス状態の観察を組み合わせることにより、体内での酸化ストレスの挙動を明らかにする実験を実施する。加えて、最終目的である酸化ストレスの低減効果を調べるために、前述の実験に抗酸化剤を投与することにより、放射線の影響が緩和されるかどうかについてもあわせて検討する。最終的に、得られた成果を論文としてまとめる。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度は、原子力機構のテクニカルパートタイマー(実験補助者)の雇用制度により、平成24年度に実験を補助していただいた方の雇用の継続ができなかったため、新規雇用者を探したが適当な人材を見つけることができなかった。そのため、実験補助者の雇用に準備していた予算(次年度使用額)を次年度へ繰り越すことになった。
次年度使用額については、平成25年度に雇用できなかった実験補助者の雇用に適用することを計画している。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] PAK1-deficiency/down-regulation reduces litter size, activates HSP16.2 gene and extends lifespan in C. elegans2013

    • 著者名/発表者名
      Yanase S, Luo Y, Maruta H
    • 雑誌名

      Drug Discoveries & Therapeutics

      巻: 7 ページ: 29-35

    • DOI

      10.5582/ddt.2013.v7.1.29

    • 査読あり
  • [学会発表] マイクロビーム照射に対するMock条件付け線虫の化学走性の応答2013

    • 著者名/発表者名
      坂下哲哉, 下澤容子, 鈴木芳代, 服部佑哉, 池田裕子, 武藤泰子, 横田裕一郎, 舟山知夫, 小林泰彦, 浜田信行, 白井花菜
    • 学会等名
      第8回高崎量子応用研究シンポジウム
    • 発表場所
      高崎シティギャラリー(高崎市, 日本)
    • 年月日
      20131010-20131011
  • [学会発表] Intermittent hyperoxia-induced hormesis decreases aerobic respiration via ins/IGF-1 and p53/CEP-1 signalings in C. elegans2013

    • 著者名/発表者名
      Yanase S, Shoyama T, Suda H, Ishii N
    • 学会等名
      19th International C. elegans Meeting
    • 発表場所
      University of California(ロサンゼルス, 米国)
    • 年月日
      20130626-20130630
  • [学会発表] Cell-level modeling and simulation of the pharyngeal pumping in Caenorhabditis elegans2013

    • 著者名/発表者名
      Hattori Y, Suzuki M, Tsuji T, Kobayashi Y
    • 学会等名
      19th International C. elegans Meeting
    • 発表場所
      University of California(ロサンゼルス, 米国)
    • 年月日
      20130626-20130630
  • [学会発表] Exploration of the site responsible for the radiation response of the salt chemotaxis learning in C. elegans using heavy-ion microbeam2013

    • 著者名/発表者名
      Sakashita T, Suzuki M, Mutou Y, Hattori Y, Ikeda H, Yokota Y, Funayama T, Hamada N, Fukamoto K, Kobayashi Y
    • 学会等名
      Heavy Ion in Therapy and Space Radiation Symposium 2013
    • 発表場所
      京葉銀行文化プラザ(千葉市, 日本)
    • 年月日
      20130515-20130517
  • [図書] PAKs, RAC/CDC42(p21)-activated kinases: Towards the cure of cancer and other PAK-dependent diseases (edited by Hiroshi Maruta) Chapter 7: PAK1 controls the lifespan2013

    • 著者名/発表者名
      S. Yanase, H. Maruta
    • 総ページ数
      11 (125-135)
    • 出版者
      Elsevier

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公開日: 2015-05-28  

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