研究課題
本研究は,神経回路の形成と機能の発達に対する宇宙放射線の影響を,モデル生物線虫を用いて明らかにすることを目的とした研究である。特に,神経系への影響を調べるために,原爆小頭症に関係する最新知見に基づき,酸化ストレスに着目して,分子マーカーを用いた酸化ストレス部位と神経回路の形成異常の同時観察を行い,細胞・組織特異的な影響メカニズムの解明を目指す。加えて,抗酸化物質による機能発達障害の低減の可能性を探る。本研究の成果は,将来,火星等への長期宇宙飛行や原子炉事故時の放射線被ばくリスクの低減に貢献できる可能性がある。平成26年度は,広範な活性酸素種のマーカーとして知られる2’,7’-ジクロロフルオレセイン(DCF)試薬を用いた放射線照射後の線虫の酸化ストレス部位観察を行ったが,残念ながら,H2O2による酸化ストレスにより観察された蛍光強度の増加が放射線によっては観察できなかった。また,昨年度,酸化ストレスに関わる遺伝子daf-2の変異体を使った実験により,放射線による学習への修飾的な影響には,この遺伝子は関与しないことが分かったが,本年度は,odr-3遺伝子変異体を用いた実験を行い,この遺伝子が放射線の学習修飾効果に大きく寄与することを明らかにできた。この遺伝子による産物は,G蛋白質の三量体のひとつであるgpαを細胞特異的に生成することが知られている。加えて,化学走性学習に関わるシミュレーションを実施し,得られた解について解析を進めることができた。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件)
C. elegans Topic Meeting: Aging, Metabolism, Stress, Pathogenesis, and Small RNAs 2014
巻: なし ページ: 95