研究課題/領域番号 |
24620015
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中尾 玲子 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究員 (20582696)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 筋萎縮 / 体内時計 / 睡眠障害 / 時計遺伝子 |
研究概要 |
申請者は、廃用性筋萎縮モデルの1つである坐骨神経切除マウスを用いて、筋萎縮の分子メカニズムを明らかにしてきた。その中で、坐骨神経切除により萎縮した筋肉では時計遺伝子Bmal1の発現位相がずれるという結果を得たことから、筋萎縮のメカニズムには体内時計分子の働きが関連する可能性があると考えた。 平成24年度は、筋特異的Bmal1遺伝子欠損マウス(以下、M-Bmal KOマウス)と野生型マウスの坐骨神経を切除し、それぞれのマウスの筋肉の萎縮度を評価した。具体的には、坐骨神経切除7日後のZT1(飼育室の照明点灯1時間後)、ZT13(飼育室の照明消灯1時間後)にマウスを解剖し、腓腹筋重量を比較した。他の研究グループから、Bmal1遺伝子欠損マウスは高齢になると筋重量が減少するとの報告があったことから、M-Bmal1 KOマウスの筋重量は野生型マウスに比べて減少し、坐骨神経切除による萎縮が重篤化すると予想していた。しかし、野生型マウス、M-Bmal1 KOマウスの腓腹筋重量は坐骨神経切除によりどちらも約30%減少し、減少率に差は見られなかった。萎縮した筋肉では、筋萎縮遺伝子と呼ばれるatrogin-1, MuRF-1のmRNA発現が誘導されるが、これらの遺伝子の発現量も野生型マウス、M-Bmal KOマウスで差が見られなかった。時計遺伝子Bmal1は筋代謝機構とは独立して機能するか、他の分子による代償機構が存在する可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、筋肉特異的Bmal1欠損マウス(M-Bmal1 KOマウス)と野生型マウスの筋萎縮の重症度を比較したが、予想に反してどちらのマウスの筋肉も同程度に萎縮した。現在、他の筋萎縮モデルである、加齢による筋減少症(サルコペニア)の発症についてこれらのマウスを比較しており、研究を進展させている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、平成25年度は産業技術総合研究所が所有する睡眠障害モデルマウスを坐骨神経切除試験に供し、正常マウスの坐骨神経を切除した際の筋萎縮の重症度と比較する予定であった。睡眠障害モデルマウスは、正常マウスと比較して1日の総活動量、および体重が減少するにも関わらず、摂餌量が増加することから、摂取した栄養を代謝できない状態に陥っていると考えられる。このような状態では筋萎縮遺伝子の発現量は増加すると予想していた。しかし、本年度に行った予備試験から、睡眠障害モデルマウスは筋萎縮遺伝子の発現量が抑制されているという結果を得た。環境ストレスによる体内時計の攪乱は、既存の筋萎縮の分子メカニズムとは異なる機構により、筋肉の異化を誘導している可能性があり、平成25年度はこの睡眠障害モデルマウスの筋代謝の動態について解析を行いたい。用いる手法は、申請書の研究計画欄に記した通り、遺伝子・タンパク質発現解析、ELISA等を用いる。また、平成24年度に実施したM-Bmal1 KOマウスを用いた実験結果を論文としてまとめ、発表を行うことを目標としている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に必要となる主な研究費は、筋萎縮モデルに用いる動物の購入・飼育費、睡眠障害モデル作成に用いる飼育装置(回転輪)、筋萎縮遺伝子等の発現量を測定するためのPCR試薬、抗体などである。また、これらの研究成果を学会で発表するための旅費、論文発表に必要な英文校正の費用を計上している。
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