研究実績の概要 |
体内時計の中枢である視交叉上核(SCN)が、どのような制御機構を介して末梢組織の概日リズムシステムを同調させているか明らかになっていない。平成26年度は、骨格筋への神経入力を遮断する坐骨神経切除モデルにおける体内時計遺伝子の変動について解析し、各時計遺伝子の発現に対する神経制御、筋萎縮の程度の影響の強さを考察した。 マウスの左肢の坐骨神経を切除し、右肢には偽手術を行った廃用性筋萎縮モデルを用いた。対照として、処置を行わないマウスを用いた。坐骨神経切除から0, 3, 7, 9, 11, 14日後の2時刻、また7、28日後の6時刻にマウスを解剖し、摘出した腓腹筋における時計遺伝子の発現量を測定した。坐骨神経切除を行っても深部体温、血中コルチコステロン量、肝臓における時計遺伝子発現の概日リズムには変化がなく、個体の概日リズムは維持されていた。坐骨神経切除肢において、Arntl, Per1, Rora, Nr1d1, Dbpの発現量は萎縮の進行に伴って減少、Per2発現量は増大した。Arntl, Dbp遺伝子発現リズムの位相は、坐骨神経切除肢において前進した。Clock遺伝子の発現は坐骨神経切除3日後から有意に増大し、28日後も発現誘導されていた。これらの体内時計遺伝子発現の変動は、偽出術肢(右肢)では見られなかったことから、液性因子の作用によるものではないと推測された。除神経、及び筋萎縮は、各時計遺伝子に特異的な機構を介して骨格筋時計遺伝子の概日リズムを攪乱することがわかった。筋萎縮の進行に伴い発現リズムが乱れた時計遺伝子が多かったことから、骨格筋機能の維持が’筋時計’のリズムの維持に重要であると推測される。この成果をChronobiology International誌に発表した。
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