本年度は 昨年度完成させたEM-CCDカメラによる自由行動マウスの生体複数部位からの遺伝子発現追跡定量解析(嗅球、背中皮膚、左耳、右耳、左大脳皮質、右大脳皮質)技術とテレメトリーによる体温リズム、脳波リズム測定を融合させた測定系を完成させた。 生体6部位の長期間の時計遺伝子の測定を行い、全ての組織で時計遺伝子の発現にサーカディアンリズムが観察され、同じ発現周期リズムで発現していた。そこで体内時計フィードバック機構に関わる遺伝子を欠損させたマウスで調べたところ、行動リズム、体温リズムが消失し、測定6部位 全ての部位で時計遺伝子発現リズムが消失していた。さらに睡眠リズムも消失していた。 次に生体内のリズムの統一制御を乱す光パルス実験を行った。明暗飼育後、マウスを恒暗条件下におき5日目に8時間の光刺激を行い、行動リズムの位相を急激に5時間後退させた。マウスの行動リズムの位相は、光刺激後 翌日には ほぼ位相後退が完了した。この時の上記6部位の遺伝子発現がどのように変化するか調べ、各組織において遺伝子発現リズムの位相後退作用が それぞれ異なることを発見した。この現象は生体内脱同調であり、時差ボケ症状、糖尿病などの体内時計関連疾患で生じることが報告されている。本研究により、時計遺伝子発現を指標とした生体内脱同調現象が1個レベルで リアルタイムで観察できるようになった。さらにマウスの嗅球の動きを動体追跡技術で追跡し、3次元空間での動きを1mm単位で測定することで、マウスの行動を睡眠、飲水活動中、摂食中、行動中の4つに自動的に分類するプログラムを動体追跡プログラムに追加した、生体複数部位の遺伝子発現を追跡定量すると同時にマウスの種々の行動を測定できる実験系が完成した。
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