研究課題
基盤研究(C)
研究目的は(1)オレキシン神経が障害されるために起こる2次性の過眠症の病態を検討し、アクアポリン4(AQP4)関連の疾患概念を確立すること。(2)オレキシン神経の脱落による脳内鉄代謝の変化とむずむず脚症候群/周期性四肢運動障害の病態の検討である。研究成果(1)これまでに12例を検討している。頭部MRIでは、全例に間脳・視床下部周辺の両側性・左右対称性病変を認めた。睡眠学的には、いずれも過眠症状を呈していたが、情動脱力発作を呈した症例はいなかった(いずれの症例も早期に治療をしたことが情動脱力発作の発症を阻止した可能性がある)。髄液オレキシンは低値が4名、中間値が8名であった。これら髄液オレキシン値は、免疫抑制療法後にいずれも正常化した。間脳・視床下部と第四脳室周囲にはAQP4が高発現するため、この抗体を介した免疫学的機序による障害が生じ、さらに同部位に存在するオレキシンニューロンも二次的に障害され、過眠症・ナルコレプシーを来している可能性が考えられた。症候性ナルコレプシーの原因としてAQP4抗体を考慮すべきであることを示すとともに、早期に診断し、不可逆的な障害が生じる前に、ステロイドや免疫抑制療法によって治療介入することが重要であると考えられた。(2) これまでに検討により、特発性のむずむず脚症候群とは異なり、ナルコレプシーでは髄液中のトランスフェリンと鉄イオンが有意に高値であり、鉄代謝が昂進している可能性も考えられる。この所見はオレキシン神経の脱落による1次的なものか、ドーパミン代謝の昂進の代償等による2次的なものであるのかは不明である。ナルコレプシーでは周期性四肢運動障害が高率にみられるが、治療薬への反応も異なるとされ、鉄代謝の病態生理と合わせて、病態は異なると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画よりは症例数は少なめではあるが、統計学的検討を行う症例数は集まっており、病態機序の検討は可能であると考えている。
今後とも計画に沿って、多数例の症例を集積して、脳脊髄液中の測定実験等をすすめて行く予定である。
当初の予定よりは、大学院生による実験とデータ整理の比率が高くなったために、実験助手の人件費を使わずに済んだために、予算の消化が少なめで終了した。25年度は当初の予定より幾分多くの症例で、オレキシン値、AQP4抗体を測定したいと考えている。またフェリチンとトランスフェリン、鉄イオンも対象疾患を広げての測定を検討する。
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