1.睡眠時の臭気吸入による反応およびその情報処理過程の解明 睡眠中にわさびの臭気(イソチオシアン酸アリル3.5-20PPM)を吸入した場合、睡眠段階2において臭気成分の枕もとへの到達からボタン押し反応までの時間は、難聴者と非難聴者でそれぞれ平均約21秒、45秒と有意差が認められ、難聴者は体性感覚(三叉神経)刺激で覚醒しやすいことが明らかとなった。聴覚障害者での反応に側頭葉聴覚野が関与するか否かは先天性障害者における脳の機能的再構築という興味深い問題であるが、臭気を吸入した際の詳細な脳内電気活動の記録とそのロレッタ解析については諸般の事情から測定環境の整備にとどまった。また、実験室外の自宅寝室での臭気吸入による睡眠からの覚醒を確認する手段として、携帯型の生体信号計測機器ついて検討した。臭気発生装置からわさび臭が噴出する前後の脈拍、酸素飽和度、活動量、1チャンネル脳波のモニタリングは有用と判断された。 2.成果の発信 本研究の応用成果である「わさび臭を発する聴覚障害者用警報装置」について、平成26年5月に近江学術出版懇話会にて、7月には筑波大学・国際統合睡眠医学研究機構にてそれぞれ講演し、平成27年には邦文誌(化学と工業)に寄稿した。また、国内外からの取材や学生訪問に対応し、日本睡眠学会等においても報知器や睡眠知識の普及に努めた。なお、成果の発信における課題として、報知器の利用者として想定される聴覚障害者の講演への参加促進と発表内容の伝達法があり、解決法として広報時の障害者ネットワークの活用、講演時の手話通訳や音声を文字化するシステムの改良が望まれる。
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