研究課題/領域番号 |
24621007
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
林 光緒 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00238130)
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研究分担者 |
小川 景子 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (70546861)
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キーワード | 短時間仮眠 / 睡眠段階2 / 脳波 / θ波 / 紡錘波 |
研究概要 |
近年、15~20分程度の短時間仮眠の効果が注目されている。このような短時間仮眠は睡眠段階1と2だけで構成されているが、睡眠段階1だけでは仮眠の効果はなく、睡眠段階2の出現が回復効果をもたらすこともすでに報告している。しかし、睡眠段階2の何が回復効果に関与しているかは不明であった。そこでまず、入眠直後の睡眠段階2の脳波を5秒毎に分けて脳波特徴を視察判定したところ、睡眠段階2の脳波は、1)低振幅脳波で占められる平坦期、2)4~7Hzのθ波が出現するθ波期、3)2~4Hzの速いδ波が出現するfast δ波期の3つで96.7%を占めていること、睡眠段階2の最中に突発的に出現する紡錘波は、睡眠段階2の44.8%の区間で出現していることが分かり、これらの研究成果を学会誌に掲載した(Sleep and Biological Rhythms, 11: 245-253, 2013)。睡眠段階2の脳波をスペクトル分析したところ、上記の平坦期、θ波期、fastδ波期の3段階は、slowδ(0.5-2.0Hz)およびfastδ(2.0-3.5Hz)帯域パワを用いることによって明瞭に区別でき、さらに、紡錘波の出現も、σ帯域(11.5-16.0Hz)パワを用いることで区別できることを確認した。続いて、仮眠前30分間と仮眠後1時間にわたり、作業成績を測定し、睡眠段階2の脳波との相関を求めたところ、疲労、意欲、自己評価等の主観的指標は、昨年度同様、θ帯域パワと有意な相関を示したが、刺激に対する反応速度や誤反応数、見落しなどの行動指標はfast spindleと有意な相関を示した。これらの結果から、睡眠段階2の最中にθ波が出現することが主観的気分の向上を促し、fast spindleの出現が課題成績の向上を促進することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視察判定によって区分した睡眠段階2の脳波段階に対してスペクトル分析することによって、脳波段階の妥当性を定性的にも定量的にも示すことができた。さらに、睡眠段階2の脳波と、仮眠前後の主観・行動指標との関係を調べることによって、仮眠による回復効果を規定する脳波活動を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
仮眠の効果を規定する脳波成分としてθ波と紡錘波が特定されたが、これらの脳波成分が出現しているときの認知情報処理過程を明らかにするために、仮眠中の各脳波段階における事象関連電位(ERP)を測定する。ERP 成分の特徴を抽出することによって、各脳波段階の機能的特性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度および本年度の達成度がおおむね順調に進展したことから、次年度に計画していた事象関連電位の測定について前倒しで実験を実施するよう準備を進めていたが、本年度中に準備が整わなかったことから、最初の計画どおり最終年度である次年度に実験を実施することにしたため。 次年度使用額(\158,560)は、平成26年度の予算と合わせ、消耗品(\102,560; 脳波用電極、薬品類、プリンタートナー)と実験参加者謝金(\56,000; 実験参加者10名×3h×@800/実験補助10回×4h×@800)として使用する。
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