近年、15~20分程度の短時間仮眠の効果が注目されている。このような短時間仮眠は睡眠段階1(S1)と2(S2)だけで構成されているが、S1だけでは仮眠の効果はなく、回復効果を得るにはS2が最低3分間必要であることを世界に先駆けて報告した。しかし、S2の何が回復効果に関与しているかは不明であった。そこで仮眠中のS2の脳波を定性的に解析したところ、S2の脳波は、1)低振幅脳波で占められる平坦期、2)4~7Hzのθ波が出現するθ波期、3)2~4Hzの速いδ波が出現するfast δ波期、の3つの脳波段階で全体の97%を占めており、S2の最中に突発的に出現する紡錘波は、S2の45%の区間で出現していた。これらの脳波成分を定量的に解析したところ、θ波と紡錘波の出現が眠気・疲労等の主観的指標および作業成績と有意な相関を示した(H24・25年度)。一方、入眠期のθ波は周波数・振幅ともに多様に変化することから、これをオンラインで判定することは難しい。これに対して紡錘波はその特徴を捉えることは比較的容易であり、オンラインで判定することが可能である。そこで睡眠脳波をリアルタイムでモニタしながら、紡錘波が一定個数出現した時点で起こし、その効果を調べた。まず108例の仮眠中の脳波を解析したところ、回復効果に必要な3分間のS2中には、紡錘波が平均6.9個出現することが分かった。そこで、仮眠中に紡錘波が7個出現した時点で起こしたところ、S2が3分間出現した時点で起こしたときよりも仮眠の効果が高かった。その際、3~4Hzのfastδの活動が高い人ほど起床後の疲労が高かった(H26年度)。以上の結果から、仮眠の回復効果はθ波と紡錘波に規定されており、δ波の出現は仮眠効果を阻害すること、S2中の脳波段階として特にθ波期が仮眠の回復効果にとって重要であることが示された。
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