研究課題/領域番号 |
24621011
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
西田 慎吾 東京医科大学, 医学部, 兼任助教 (90406140)
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研究分担者 |
石川 純 東京医科大学, 医学部, 助教 (90424465)
中村 真樹 公益財団法人神経研究所, その他の部局等, 研究員 (70375054)
駒田 陽子 公益財団法人神経研究所, その他の部局等, 研究員 (40451380)
井上 雄一 公益財団法人神経研究所, その他の部局等, センター長 (50213179)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 不眠症 / 睡眠薬 / 副作用 / 睡眠時随伴症 / 薬物依存 / 睡眠関連食行動障害(SRED) / 睡眠相後退症候群(DSPS) / むずむず脚症候群(RLS) |
研究概要 |
(1)睡眠薬使用による睡眠関連食行動障害(sleep related eating disorder: SRED)の実態ならびにその発現促進因子について、大学病院精神科外来患者1048名を解析対象として、自記式質問紙による患者背景やピッツバーグ睡眠調査票(Pittsburgh Sleep Quality Index: PSQI)、夜間異常行動、睡眠薬の服用期間や服用時刻、副作用を調査するとともに、精神科診断名(DSM-IVTR)や処方内容について主治医から確認した。 解析対象1048名のうち、SRED群は88名(8.4%)、非SRED群は960名(91.6%)であった。SRED群では非SRED群と比較し、独居者、PSQI総得点、眠前薬ジアゼパム換算量が有意に高く、年齢は有意に低かった。睡眠時遊行症の合併を42名(47.7%)で認めた。多重ロジステイック回帰分析の結果、低年齢、抗精神病薬服用者、眠前薬ジアゼパム換算量が多いことが、SRED発現促進因子である可能性が示唆された。 (2)睡眠薬抵抗性の不眠を呈する睡眠相後退症候群(delayed sleep phase syndrome: DSPS)におけるメラトニン受容体作動性睡眠薬ramelteonの有効性ついて、DSPS患者20名を解析対象として、治療前入眠時刻の平均6時間20分前にramelteon 8mgまたは4mgを8週間投与継続した。 Ramelteon投与前と比較し、投与8週で入眠・覚醒時刻ともに約2時間有意に前進した。8mg投与群と4mg投与群との間で、入眠・覚醒時刻に有意差はなかった。Clinical Global Impression(CGI)からみた有効率は、投与8週で75.0%、服用後の眠気以外の副作用は認めなかった。以上より、ramelteonがDSPS治療における有力な治療薬になりうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、不眠症患者における睡眠薬の服用長期化と服用量増加の因子に関する研究を実施し、現在結果を解析中である。来年度に実施を予定していた睡眠薬使用による睡眠時随伴症の実態並びにその発現促進因子の研究を実施し、睡眠薬服用精神科患者における睡眠関連食行動障害(sleep related eating disorder: SRED)の有病率が8.4%と比較的高く、独居者やピッツバーグ睡眠調査票(Pittsburgh Sleep Quality Index: PSQI)総得点が高い者、眠前薬ジアゼパム換算量が多い者に多いこと、睡眠時随伴症の合併を約半数(47.7%)に認めること、睡眠薬によるSREDの発現促進因子として、低年齢者、抗精神病薬服用者、眠前薬ジアゼパム換算量が多いことを示唆する結果を得た。 また、睡眠薬抵抗性の不眠症を呈し、睡眠薬の服用長期化と服用量増加の原因となることが多い睡眠相後退症候群(delayed sleep phase syndrome: DSPS)におけるメラトニン受容体作動性睡眠薬ramelteonの有効性の検討も実施し、ramelteonがDSPSに伴う不眠に有効である可能性を示唆する結果も得た。 以上のように、研究は順調に進展しており、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
睡眠薬抵抗性の不眠症を呈し、睡眠薬の服用長期化や服用量増加の原因となる睡眠相後退症候群(delayed sleep phase syndrome: DSPS)におけるramelteonの有効性の研究を継続してすすめるとともに、DSPSと同様に睡眠薬抵抗性の不眠症を呈するむずむず脚症候群(restless legs syndrome: RLS)における効果的な薬物治療に関する研究を実施する予定である。 また、糖尿病患者では不眠症の患者が多いことから、糖尿病患者における不眠症の実態調査を実施する予定である。これらの糖尿病患者における不眠症の特徴を明らかにすることにより、糖尿病患者における効果的な不眠症対策について検討する。 さらに、地域コホートにおける不眠症のQOL(quality of life)に関する質問紙による追跡研究も実施し、ピッツバーグ睡眠質問表(PSQI)でみた不眠症状の重症度変化、睡眠薬の服薬状況とQOLに関する調査を行い、baselineの調査との比較を行い、睡眠薬の長期使用によるQOLへの影響に注目した解析を行う予定である。 また、すでに実施した睡眠薬の服用長期化や服用量増加の因子に関する研究の解析をすすめるとともに睡眠薬による2次性睡眠時随伴症と特発性の睡眠時随伴症、健常者における終夜ポリソムノグラフィ(polysomnography: PSG)検査を使用した睡眠生理学的な検討も実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、睡眠薬の長期服用や多剤併用の原因となる睡眠相後退症候群(delayed sleep phase syndrome: DSPS)におけるramelteonの有効性の研究、むずむず脚症候群(restless legs syndrome: RLS)における効果的な薬物利用の研究、糖尿病患者における不眠症の実態調査、睡眠薬の服用長期化や多剤併用の背景因子や睡眠薬による2次性睡眠時随伴症(とくに睡眠関連食行動障害)の研究などにおいて、研究で使用する必要物品の購入、これらの研究により得られた成果を発表するための学会発表の交通費や宿泊費、学会参加費、論文投稿のための英文校正費などに研究費を使用する予定である。 また、地域コホートにおける不眠症のQOL(quality of life)に関する質問紙による追跡研究では、地域調査時の交通費や宿泊費として研究費を使う予定である。 睡眠薬による2次性睡眠時随伴症と特発性の睡眠時随伴症、健常者における終夜ポリソムノグラフィ(polysomnography: PSG)検査を使用した睡眠生理学的な検討では、終夜PSG検査用の消耗品代や健常者への研究協力への謝金、終夜PSG検査結果の解析で使用する脳波解析ソフトの購入費にも研究費を使用する予定である。
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