研究課題/領域番号 |
24621011
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
西田 慎吾 東京医科大学, 医学部, 兼任助教 (90406140)
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研究分担者 |
石川 純 東京医科大学, 医学部, 助教 (90424465)
中村 真樹 公益財団法人神経研究所, その他部局等, 研究員 (70375054)
駒田 陽子 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40451380)
井上 雄一 公益財団法人神経研究所, その他部局等, センター長 (50213179)
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キーワード | 不眠症 / 睡眠薬 / 副作用 / 睡眠時随伴症 / 薬物依存 / 睡眠関連食行動障害(SRED) / 睡眠相後退症候群(DSPS) / むずむず脚症候群(RLS) |
研究概要 |
(1) 大学病院精神科外来受診中の睡眠薬服用者1043名を対象に、患者背景、ピッツバーグ睡眠調査票(PSQI)、睡眠薬の服用期間、ジアゼパム換算ベンゾジアゼピン(BZ)系睡眠薬服用量、睡眠薬の副作用の有無などの評価や薬剤依存性に関する依存性調査票D-2-Aを使用した評価を実施した。5年以上の睡眠薬服薬継続者が48.4%(471名)と多く、BZ系睡眠薬の平均ジアゼパム換算量は10.9±9.0㎎であった。睡眠薬依存に関する因子解析の結果、若年者と睡眠薬高用量服用が依存リスクを高め、依存群では高用量服用にもかかわらず不眠は改善せず、さらに睡眠薬の副作用頻度も高いとの結果を得た。 (2) 睡眠専門外来を受診し睡眠関連食行動障害(SRED)と確定診断を受けた52名を対象に、カルテや検査所見を後方視的に調査し、SREDの臨床的特徴の差異について検討した。1次性SREDでは症状が夜間前半に発現し、小児期睡眠時遊行症の既往が高かった。睡眠薬服用による2次性SREDでは発症年齢が高く、症状の記憶の欠落が多いのに対し、DSPSによる2次性SREDでは症状の記憶の欠落が少ないとの結果を得た。 (3) 睡眠薬抵抗性の不眠を呈するむずむず脚症候群(RLS)におけるpramipexole(PPX)治療下でのRLS患者のaugmentation発症実態に関して検討した。RLS患者280名中8.93%(25名)がaugmentationを発症し、発症時平均年齢は67.0±13.7歳、発症時PPX平均投与量は0.432±0.161mg、PPX処方開始から発症までの平均投与期間は38.7±19.3か月であった。Augmentation発症に関する因子解析の結果、PPX投与量が多いことが危険因子となり、ROC曲線からaugmentation発症予防のPPX投与量cut off値は 0.3125 mg/日との結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、不眠症患者における睡眠薬の服用長期化と服用量増加の因子に関する研究をすすめ、若年者と睡眠薬高用量服用が依存リスクを高め、依存群では高用量服用にもかかわらず不眠は改善せず、睡眠薬の副作用も多いとの結果を得た。 また、睡眠薬による睡眠時随伴症の実態並びにその発現促進因子の検討に関しての研究を実施し、1次性SREDでは症状が夜間前半に発現し、小児期睡眠時遊行症の既往が高いことや睡眠薬服用による2次性SREDでは発症年齢が高く、症状の記憶の欠落が多いのに対し、DSPSによる2次性SREDでは症状の記憶の欠落が少ないとの結果を得た。 睡眠薬抵抗性の不眠を呈するむずむず脚症候群(RLS)におけるpramipexole(PPX)治療下でのRLS患者のaugmentation発症実態に関する研究も施行し、Augmentationの有病率や発症状況に加え、augmentation発症に関する因子解析の結果、PPX投与量が多いことがaugmentation発症の危険因子となり、ROC曲線からaugmentation発症予防のPPX投与量cut off値は 0.3125 mg/日との結果を得た。 現在、睡眠薬による睡眠時随伴症患者の終夜PSG指標に関する研究や地域コホートにおける不眠症のQOLに関する質問紙による追跡調査も検討中であり、現在までの時点では概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、睡眠薬の服用長期化や服用量増加の因子に関する研究や睡眠薬による2次性睡眠時随伴症(とくに睡眠関連食行動障害)の研究を継続する。 睡眠薬の長期服用や多剤併用の原因となる睡眠相後退症候群(DSPS)やむずむず脚症候群(RLS)について、DSPSにおけるramelteon治療の治療反応規定因子に関する研究やRLSにおけるaugmentation発症予防の研究も継続する。 睡眠薬による2次性睡眠時随伴症と特発性の睡眠時随伴症、健常者における終夜PSG検査を使用した睡眠生理学的な検討や地域コホートにおける不眠症のQOLに関する質問紙による追跡調査も研究期間内に出来る範囲で実施していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度から施行予定であった睡眠薬による睡眠時随伴症患者の終夜PSG指標に関する研究の参加者への謝金や研究補助の人件費が発生しなかった。また、地域コホートにおける不眠症のQOLに関する質問紙による追跡調査研究で使用する予定であった旅費も発生しなかった。さらに、学会参加の国内旅費も予定より少ない金額となったため。 次年度は、睡眠薬の服用長期化や服用量増加の因子に関する研究や睡眠薬による2次性睡眠時随伴症(とくに睡眠関連食行動障害)の研究を継続する。睡眠薬の長期服用や多剤併用の原因となる睡眠相後退症候群(DSPS)やむずむず脚症候群(RLS)について、DSPSにおけるramelteon治療の治療反応規定因子に関する研究やRLSにおけるaugmentation発症予防の研究も継続する。睡眠薬による2次性睡眠時随伴症と特発性の睡眠時随伴症、健常者における終夜PSG検査を使用した睡眠生理学的な検討や地域コホートにおける不眠症のQOLに関する質問紙による追跡調査も研究期間内に出来る範囲で実施予定である。 これらの研究で使用する必要物品の購入、参加者への謝金や研究補助の人件費、研究により得られた成果を発表するための学会発表の交通費や宿泊費、学会参加費、論文投稿のための英文校正費などに研究費を使用する予定である。
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