研究概要 |
私たちの精神・身体機能は睡眠・覚醒という劇的に変化する脳状態に立脚している。さらにこの睡眠・覚醒もまたサーカディアンリズムという生体自らが生み出す24時間リズムに制御されている。脳深部の視交叉上核(SCN)は睡眠・覚醒サーカディアンリズムの生物時計だが、SCNからの信号がどこに伝えられどのようにして睡眠・覚醒のサーカディアンリズムが形成されるのかという基本的な神経システムの理解は、睡眠、サーカディアンリズム双方の複雑さゆえ困難であった。 私たちは神経伝達物質セロトニンの急速・選択的な除去法を開発し、ラット睡眠・覚醒のサーカディアンリズムが崩壊することを見出した(Nakamaru, Miyamoto et al., Eur J. Neurosci)。さらにラット脳各領域の神経活動解析と薬理学的操作の結果、SCNからのサーカディアンリズム出力が、睡眠・覚醒を直接的に実行する前脳基底部・視索前野 (BF/POA) 領域で統合され睡眠・覚醒サーカディアンリズムが生み出されると結論した(Miyamoto et al., J. Neurosci)。 不眠、うつ病、リズム障害、セロトニン系は強い関連が知られているが、本研究はこれらを統一的にシステムとして理解する枠組みを与えると考えられる。今後睡眠や生体リズムの生物学的意義を神経活動、神経回路に基づいて理解を進めることによって脳機能の制御や設計に貢献すると期待される。
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