研究概要 |
我々の精神・身体機能は睡眠・覚醒という脳状態に立脚している。この睡眠・覚醒もまたサーカディアンリズムという生体自らが生み出す24時間リズムに制御されている。脳深部の視交叉上核(SCN)は睡眠・覚醒サーカディアンリズムの生物時計だが、SCNからの信号がどこに伝えられどのようにして睡眠・覚醒のサーカディアンリズムが形成されるのかという基本的な神経システムの理解は、睡眠、サーカディアンリズム双方の複雑さゆえ困難であった。 私たちは神経伝達物質セロトニンの急速・選択的な除去法を開発し、ラット睡眠・覚醒のサーカディアンリズムが崩壊することを見出した(Nakamaru et al., Eur J. Neurosci. 2012)。さらにラット脳各領域の神経活動解析と薬理的操作の結果、SCNからのサーカディアンリズム出力が、睡眠・覚醒を直接的に実行する前脳基底部・視索前野領域で統合され睡眠・覚醒サーカディアンリズムが生み出されると結論した(Miyamoto et al., J. Neurosci. 2012)。 本年度はサーカディアンリズムと睡眠・覚醒が各脳領域の神経活動と機能へどのように影響を及ぼしているのか、そして脳領域間の相互作用や階層性とどのように関わっているかを調べることに重点を置いた。複数の脳領域での神経細胞集団の挙動を反映するlocal field potential同時記録を開始し遺伝的に神経伝達が変化したマウスを用い解析を進めている。また生体の神経活動記録法を適用し本研究が対象とする脳機能(視覚、可塑性、運動、恒常性)に関する基本的知見を報告した(Toyoizumi et al., Neuron. 2013; Hisatsune et al., Front Neural Circuits.2013; Ogiwara et al., Hum Mol Genet.2013)。
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