研究課題
脳セロトニン(5-HT)の働きによって、24時間生物時計と睡眠・覚醒リズムが統合されることを見出した。サーカディアンリズムと呼ばれる24時間周期のリズムは多くの生物現象に認められ、睡眠・覚醒もこのリズムに強く制御されている。ヒトが自然に朝起きて夜寝るのもこの制御による。これまで、脳深部の視交叉上核(SCN)がサーカディアンリズムの主時計であると知られていたが、SCNからの信号がどこに伝えられ、どのように睡眠・覚醒のサーカディアンリズムが形成されるのかというシステムの理解は進んでいなかった。研究グループは、うつ病とも関連する脳内のセロトニンを急速・選択的に除去する物質を開発し、この物質をラットに投与すると、睡眠・覚醒のサーカディアンリズムが崩壊することを報告した。今回、自由行動中のラットにこの物質を投与し、数週間にわたって脳の各領域の神経活動を解析した結果、睡眠・覚醒のサーカディアンリズムが無くなっているにもかかわらず、SCNのサーカディアンリズムは強固に保たれ、睡眠・覚醒機能そのものも維持されている(睡眠時の神経活動低下と覚醒時の活性化)ことを見いだした。しかし、睡眠・覚醒を直接的に実行する前脳基底部・視索前野(BF/POA)という部位の神経活動は、サーカディアンリズムが消失していた。この部位のセロトニン受容体を阻害すると、睡眠の多くを占める徐波睡眠のサーカディアンリズムが消失した。これらにより、 SCNからのサーカディアンリズムは、セロトニンの作用を受けたBF/POA領域に伝えられ、そこで睡眠・覚醒機能を統合し、24時間周期の睡眠・覚醒リズムを生み出すと結論した。今後、セロトニンとうつ病や不眠、睡眠リズム障害などの体系的理解が深まることで、これら疾患に対する科学的知見に基づいた治療に貢献すると期待される。
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Nature Communications
巻: 5 ページ: 1-16
doi:10.1038/ncomms5501
http://www.riken.jp/pr/press/2012/20121017/
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