研究課題/領域番号 |
24621013
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
内山 奈穂子 国立医薬品食品衛生研究所, 生薬部, 主任研究官 (60392297)
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研究分担者 |
有竹 浩介 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 准教授 (70390804)
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キーワード | カンナビノイド / 睡眠 / 覚醒 |
研究概要 |
本研究は,睡眠・覚醒調節に関わる新たな作用機構として,カンナビノイドに焦点をあて,その睡眠調節作用を解明することを目的とする. 本年度は,昨年度の研究で顕著な自発運動量の減少がみられた3種の合成カンナビノイド[cannabicyclohexanol (CCH),JWH-018,(-)-CP-55940]について,さらに用量依存性を調べた.各薬物を,1.0, 2.5, 5.0 mg/kgずつ野生型マウスに腹腔内投与した結果,濃度依存的に自発運動量の減少作用が認められた.次に,睡眠覚醒障害モデル動物として,リポカリン型PGD合成酵素(L-PGDS)或いはアデノシンA2A受容体遺伝子欠損マウスを用いて,CCH,JWH-018,(-)-CP-55940を各々5.0 mg/kgずつ投与し,自発運動量に及ぼす作用を調べた.その結果,CCH,JWH-018の自発運動量抑制作用は,L-PGDS及びアデノシンA2A受容体遺伝子欠損マウスにおいて有意に増強された.次に,これら合成カンナビノイドのマウスの脳波に及ぼす作用を検討した.各薬物を5.0 mg/kgずつ野生型マウスに腹腔内投与した結果,全ての化合物投与後の脳波に共通して,2-3Hz(ノンレム睡眠:デルタ波)の帯域のスペクトル強度が有意に増加した.また,CCH,JWH-018及び(-)-CP-55940はそれぞれ,投与12,10及び10時間後まで有意に類似の帯域を増加させた.また,最も脳波のスペクトル強度が増加した時間は,CCHが投与3~4時間後であり,JWH-018及び(-)-CP-55940が投与2~3時間後であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5種類のカンナビノイドについてマウスの自発運動量に及ぼす作用を検討したところ,3種類のカンナビノイド(CCH,JWH-018及び(-)-CP-55940)が顕著に自発運動量を減少させた.また,この3薬物について,野生型マウスを用いて濃度依存性を調べた結果,前述の通り,濃度依存的に自発運動量の減少させることが明らかとなった.次に,睡眠覚醒障害モデル動物として,リポカリン型PGD合成酵素(L-PGDS)或いはアデノシンA2A受容体遺伝子欠損マウスを用いて自発運動量に及ぼす作用を検討した結果,CCH,JWH-018の自発運動量抑制作用は,両遺伝子欠損マウスにおいて有意に増強された.次に,これら薬物の野生型マウスの脳波に及ぼす作用を検討した結果,CCH,JWH-018及び(-)-CP-55940投与後の脳波に共通して,2-3Hz(ノンレム睡眠)の帯域のスペクトル強度が有意に増加した.また,投与10~12時間後までと長時間にわたり,この変化が持続した.従って,これらカンナビノイドがマウスの自発運動量抑制作用と脳波に変化を及ぼす作用の発現には相関があることが示された.以上の点に関して成果があった,よって,達成度は「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,3種類の合成カンナビノイドCCH,JWH-018及び(-)-CP-55940について,睡眠覚醒障害モデル動物としてリポカリン型PGD合成酵素(L-PGDS)及びアデノシンA2A受容体遺伝子欠損マウスを用いた脳波測定を行い,睡眠覚醒に及ぼす作用を検討する.また,各カンナビノイドの濃度依存性の検討も行う.さらに,脳内睡眠物質(PGD2やアデノシンなど)の濃度を測定し,各カンナビノイドがこれら睡眠物質の産生調節に関与しているかを検討する.また,その他に既に入手している睡眠覚醒障害モデル動物を用いて,まず各カンナビノイドの自発運動量に及ぼす影響を調べ,他の睡眠調節部位に作用するかどうかに関しても検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に行ったマウス脳波等測定の実験費用が予定額以下で済んだため. 基本的には今年度と同様の使用を計画している.通常汎用される試薬,脳波および自発運動量測定用の器具等の費用に加えて,遺伝子欠損マウスの繁殖飼育費用として使用する予定である.また,研究代表者と分担者の研究打ち合わせ等や,研究成果発表のための学会参加の出張費,さらに論文投稿料,印刷代等の費用として使用する予定である.
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