研究課題/領域番号 |
24621014
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
本多 和樹 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 研究員 (70173656)
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研究分担者 |
児玉 亨 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 副参事研究員 (20195746)
田中 進 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (30399472)
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キーワード | ナルコレプシー / TRIB2-anitibody / オレキシン |
研究概要 |
ナルコレプシーへの自己免疫機序の関与が示唆されている。近年、ナルコレプシー患者血清中に抗TRIB2抗体の存在が示され、さらに抗TRIB2抗体を含む患者イムノグロブリン分画のマウス脳室内への投与がオレキシン神経の減少を引き起こすことも報告された。本年度はTRIB2ペプチド免疫動物を追加作成し、昨年度の予備実験で見られた抗TRIB2抗体のナルコレプシー病態への関与を探索した。特異性を確認したTRIB2-C末ペプチドをメスSDラットに2週おきに皮下に免疫、対照としてKLHのみを免疫した群を用意した。14週後、血清、CSFならびに視床下部組織をサンプリングし、抗TRIB2抗体価、オレキシン含有量、オレキシン遺伝子発現量、ならびにオレキシン細胞数を検討した。TRIB2を免疫したラット全てにおいて抗TRIB2抗体価の上昇がELISA法により確認された。陽性血清を用いたImmunoblottingにおいてもTRIB2家兎血清に観察される位置と同じ位置のバンドが観察された。KLH免疫群における陰性血清を用いてもバンドは観察されない。しかしながらTRIB2免疫群のみならずKLH免疫群においてもオレキシン遺伝子発現量の減少とCSF中のオレキシン量の減少が観察された。視床下部におけるオレキシン含有量、細胞数、ならびにMCH遺伝子発現量に変化は観察されていない。本研究の結果は抗原によらない免疫賦活によりオレキシン神経が抑制されることを示している。実際に末梢抗TRIB2抗体が障害性を持つためには血液脳関門の破綻が必要であることが考えられ た。興味深いことに生後オレキシン神経が脱落するよう遺伝子改変されたataxin3/オレキシンマウス血清中において抗TRIB2抗体を見いだしており、オレキシン神経の脱落に伴った結果として抗TRIB2抗体が出現してくる可能性も考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度予定された実験はほぼ順調に完了し、データの整理を行っている。さらに追加実験が必要な点に関しては免疫動物の準備を開始している。 昨年度の結果からナルコレプシーモデルマウス(ataxin-3 mouse)で血清中のTRIB2抗体価が上昇することが確認されたため、TRIB2抗体はオレキシン細胞の障害の原因というより結果である可能性が示唆され、原因・結果両側から実験を進めているが、ほぼ順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
実験結果をまとめるに当たり必要とされるデータはほぼ取得済みであり、現在、学会報告を重ね、データを検証しており、本年度は学術誌投稿準備を進める。レフリーの指摘など必要に応じて追加実験を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ計画通りに予算を使っているが、動物実験の部分が順調に進んでいるため、あらかじめ再実験を考慮して用意していた予備費が使われていないため経費を持ち越すことになった。 学術誌投稿を予定より早めるために、海外の学会参加による意見交換の機会を増やし必要な追加実験を実施するために使用する。
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