研究実績の概要 |
ナルコレプシー発症への自己免疫機構の関与が示唆されている。この仮説を検証するため実験的にナルコレプシー発症に関係するとの報告のあるTRIB2ペプチドを用いてラットを免役し、TRIB2抗体価、オレキシン含有量、オレキシン遺伝子発現の変化、オレキシン細胞の変成または細胞数の変化を調べてきた。TRIB2に対する血清中抗体価は実験終了時において(21週齢)全例で同一週齢の対象ラットに比べ上昇していた。脳脊髄液中においても8例中5例の上昇を見たが、血清中の抗体価との間に有意な相関は見られなかった。 脳脊髄液中のオレキシン量は21週齢ラットに於いて有意に減少した(76.1 ± 9.4 %, p < 0.05)。同様に視床下部におけるmRNAの発現も有意に減少していた(1.76 ± 0.14, p < 0.01、対照群:2.50 ± 0.33)。 さらに視床下部オレキシン領域のオレキシンタンパク量およにオレキシン細胞数を調べたところ有意な変化は見られなかった。一方で、比較のためにアジュバントのみによる免疫賦活を行ったところTRIB2免疫と同様の変化を示した。従って、観測されたオレキシンの変化はTRIB2に特異的反応と言うより免疫賦活により元々脆弱性を示すオレキシン細胞が活性を低下させたためと考えられる。
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