研究課題
基盤研究(C)
概日リズム睡眠障害は睡眠覚醒リズム異常を主徴とし、うつ状態など気分障害を併発する。本研究は、概日リズム睡眠障害患者の末梢組織を用いて、生物時計と気分調節の両システムの機能障害に関わる分子メカニズムを検証する。患者および健常被験者の生体組織由来の初代培養細胞系で、1)細胞内の時計遺伝子発現リズムをリアルタイム測定するシステムを利用して、概日リズム睡眠障害に特徴的な生物時計の障害特性を決定する。同システムを用いて、2)生体リズム周期および気分調節の両作用を持つリチウムが時計遺伝子発現リズムに及ぼす影響を明らかにする。ついで、3)Wntシグナル系の阻害が時計遺伝子発現リズムに及ぼすリチウムの効果を修飾するか検証する。これらの課題を通じて、Wntシグナル系が生物時計と気分調節の両システムにどのように関わっているか明らかにする。概日リズム睡眠障害患者および健常対照者を対象として、皮膚生検から樹立した初代線維芽培養細胞を用いて、培養細胞に概日リポーター遺伝子(時計遺伝子プロモーター+ルシフェラーゼ遺伝子)を導入し、各被験者に特有な時計遺伝子発現リズムをリアルタイムに測定し、得られた発光リズムデータから各被験者の概日リズム特性を決定した。患者と健常者の概日リポーター遺伝子発現リズム特性を比較した結果、概日リズム睡眠障害患者は対照被験者に比べてより長いリズム周期を示す傾向が認められた。このことから、概日リズム睡眠障害の発症にリズム周期の延長が関与すること、また、周期以外の生物時計機能障害も関わる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
個人の生体試料を利用した末梢時計機能評価システムを概日リズム睡眠障害患者に応用し、患者群と健常群由来初代線維芽培養細胞における時計遺伝子発現リズム特性の比較・検証を通じて、患者群の生物時計機能障害特性を明らかにしている。
概日リズム睡眠障害患者および健常対照者における末梢時計機能評価を進め、概日リズム睡眠障害に特徴的な生物時計の障害特性を決定する。末梢時計機能評価システムを利用して、リズム調整剤が時計遺伝子発現リズムにおよぼす影響を明らかにし、その作用系となるシグナルパスウェイを検証する。
所属機関長に研究費の管理および経理の事務を委任するため間接経費として直接経費の30%計上している。本研究遂行に必要な施設・設備・機器等はすべて現存のものを利用するが、細胞培養実験にかかわる物品の多くは消耗品のため、物品費が直接経費の約30%、細胞培養技術を有する研究補助員1名分の人件費・謝金が直接経費の約30%、本研究成果を発表するため国内学会への旅費・参加費を直接経費の約10%計上している。
すべて 2012
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 425 ページ: 902-907
10.1016/j.bbrc.2012.08.008
プラクティス
巻: 29 ページ: 275-280