研究課題
概日リズム睡眠障害は、生物時計機能の異常や不適応から生じていると考えられているが、生体リズム異常の病態を精確に理解し診断するためには、患者個人の生物時計機能を正しく評価することが必要である。生物時計の発振機構には時計遺伝子群の転写・翻訳制御ネットワークが関与しており、その時計機能は中枢である視交叉上核だけでなく他の組織・器官の末梢細胞にも備わっていることから、末梢細胞における時計遺伝子発現リズムを測定することにより、個人の生物時計機能を評価する代用測定法が試みられている。我々は、以前の研究で、健常被験者由来の初代線維芽培養細胞における時計遺伝子発現リズム周期が社会的制約を受けない休日の睡眠時刻ならびに朝型夜型(クロノタイプ)と有意に相関することを示した。本研究では、International Classification of Sleep Disorders (ICSD) 2nd editionに準じた16歳以上の睡眠相後退型およびフリーラン型、また、対照群として睡眠障害をもたない健常者を対象とした。患者群、対照群被験者の背側部に皮膚生検を行い、皮膚小切片から各被験者由来初代線維芽培養細胞を樹立した。得られた培養細胞に、概日リポーター遺伝子を導入し、その後、微弱発光測定装置を用いて培養細胞内の発光量変化を経時的に測定し、発光リズムの特性を決定した。フリーラン型患者群は対照被験者群に比べて周期長に有意な違いが認められたが、睡眠相後退型患者群では認められなかった。このことから、フリーラン型の発症にはリズム周期の変化が一因であること、睡眠相後退型ではリズム周期長は要因とはならない可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
概日リズム睡眠障害患者の皮膚生検由来培養細胞内の時計遺伝子発現リズム測定により、患者群の末梢時計機能を評価し、概日リズム睡眠障害患者サブタイプによる時計機能障害の違いが明らかになってきている。
概日リズム睡眠障害患者の時計機能の障害を特定すると同時に、個人の皮膚由来培養細胞系を利用して、リズム調整薬が生物時計に作用する仕組みを明らかにしていく。
今年度も個人の生体試料を用いた生物時計機能の評価を重点的に行ったため、必要となる試薬の量や種類が減少し、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、培養細胞実験を行う研究補助の人件費に充当する。
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http://www.ncnp.go.jp/press/press_release130705.html
http://labo.sleepmed.jp/research_project.html