研究課題
概日リズムに異常を伴う代表的な疾患の一つに概日リズム睡眠障害があげられる。睡眠時間帯が著しく前進する睡眠相前進型、反対に、著しく後退する睡眠相後退型、入眠・覚醒時刻が毎日30分から1時間ずつ遅れていくフリーラン型がある。これらの疾患は、生物時計の発振もしくは同調機能の障害により生じると考えられている。概日リズム睡眠障害患者(睡眠相後退型、フリーラン型)からゲノムDNAを収集し、睡眠相後退型182名(男性111名、女性71名;平均年齢26.68 ± 9.25)、フリーラン型67名(男性48名、女性19名;平均年齢26.72 ± 9.79)までサンプル数を積み増した。まず、一般生活者925名(男性274名、女性651名;朝型245名、中間型594名、夜型86名;平均年齢36.45 ± 12.10)に対して時計遺伝子CLOCK、CRY2、NPAS2、PER1、PER2、PER3、TIM上の30SNPのタイピングを行った。そのうち10SNPの多型頻度と被験者のクロノタイプ(朝型夜型)の関連性を調べたところ、PER3遺伝子のSNP(rs228697)がクロノタイプと有意に関連することが明らかとなった。さらに、睡眠相後退型182名、フリーラン型67名に対して10SNPの多型頻度を決定し、一般生活者925名を対照被験者群としてケース・コントロール関連解析を行った結果、クロノタイプと有意な関連性を示したPER3 SNP(rs228697)がフリーラン型の表現型とも強い関連性を示すことが明らかとなった。この多型によりPER3蛋白864番目のアミノ酸はプロリン(P)もしくはアラニン(A)になる。概日リズムの形成には時計遺伝子・時計蛋白の相互調節が重要な役割を担っていることから、この多型にともなうアミノ酸置換がPER3蛋白機能に何らかの変化を生じ、生物時計機能に違いをもたらしている可能性がある。時計遺伝子PER3は睡眠習慣の個人差やフリーラン型の発症メカニズムを解明する際の有力なターゲットと考えられる。
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Scientific Reports
巻: 4(6309) ページ: 1,6
10.1038/srep06309
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release140909.html
http://www.ncnp.go.jp/nimh/seiri/