研究課題
挑戦的萌芽研究
娯楽数学の古典的な問題である川渡り問題について、その一般化問題を定式化した。古典的な考え方は、渡りたいメンバーとその内で誰が船を漕げるか、船の定員、どういう状態が禁止されているかを入力とし、解法は「認められている状態」を全列挙してそれからグラフを構成して、グラフの散策アルゴリズムを用いて、初期状態から目標状態への到達可能性を判定していた。しかしこの方法だと、「認められている状態」が指数的に巨大になった場合に解く事が困難である。それに対して、我々は、「禁止されている状態」の数の多項式時間で解くアルゴリズムを与えた。さらに具体的に説明すると、船の乗員に対する制約が与えられていない場合には、たとえ船の定員の大小に関わらず、多項式時間アルゴリズムが存在する事を示した。これは指数サイズの(ただし規則性のある)グラフの削除される頂点だけを与えて連結性を判定する問題であり、娯楽数学に限らず、多くの問題に応用可能な基礎アルゴリズムである。また、川渡りの回数に制限を与えた場合で、両岸の人員に対する制約が無い問題を考え、船の定員が3以上ならばNP困難であることを示した。その一方で、船の定員が2の場合には、ほとんどの場合が多項式時間で解け、しかも最小輸送数が入力ペラメータの簡単な式で表されることを示した。これらの成果は国際会議FUN2012で採録され、さらにその結果を拡張し、現在論文投稿中である。
1: 当初の計画以上に進展している
川渡り問題は認知度も高い問題で、これに対してこれほど広いクラスの問題が多項式時間で解ける事を示した事はたいへんインパクトのある結果である。さらにこの結果は、潜在的に指数サイズのグラフに対する多項式時間アルゴリズムという画期的な視点を含んでおり、計算機科学のあらたな分野の開拓の可能性もある。
一般化川渡り問題の未解決問題と指数サイズグラフ上の多項式時間アルゴリズムへの発展を考える。さらに、ケーキ分割問題と、交代計算機モデルにおける定数時間アルゴリズムについての研究を引き続き行う。
研究調査、研究発表のため国内外の会議参加の費用と、アルゴリズムや計算量、娯楽数学などの書籍および論文集の購入などに主に使用する。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Theoretical Computer Science
巻: 未定 ページ: 未定
Natural Computing
Proc. of The 6th International Conference on Fun with Algorithms (FUN2012), LNCS, Springer
巻: 7288 ページ: 235--244
Proc. of The 39th International Colloquium on Automata, Language and Programming (ICALP 2012) (1), LNCS, Springer
巻: 7391 ページ: 498--509
Proceedings of ICNC'12
巻: なし ページ: 407--413